直木賞受賞作、桜木紫乃さんの「ホテルローヤル」に読み耽っていた

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ご存知、本年149回直木賞を受賞した短編作品集である。直木賞発表の翌日に書店で探したがすでにどの書店でも売切れていた。先日はようやく増版されたのを目にして購入していたのだ。

すでに様々なマスコミ報道で喧伝されているように、この直木賞受賞の作品集は「ホテルローヤル」というラブホテルを舞台にして展開されている。大衆文学賞こと直木賞受賞ということで、エログロ系な物語を期待して購入する読者も少なくないようだが、そんな期待は木っ端微塵に砕き去られており、それぞれに作家の人生体験をもとに練りこまれた掌的小説といった印象なのである。

書き下ろしを含む7編の短編小説集の「ホテルローヤル」は、云わば反時系列的に順序立てられている。つまりは最初の掌編が時系列的には最も新しいのであり、最後の掌編「ギフト」が最も古いときの、「ホテルローヤル」オープンにまつわるエピソードを描いている。

世の不条理に流されつつも自らの生き場所を求める人々が、何組も登場しており、それぞれに人生の機微を表せつつ、なお先の希望を抱き続けているさまが、読後感を爽やかにさせている。報道によれば作家の桜木紫乃さんの元職業が、ラブホテルの経営だったということであり、作家自らの長く蓄積された思いの数々が凝縮されている。