未だ未だ蒸し暑い日々が続くが、空を見上げたらうろこ雲が綺麗なシルエットを描いていた。巻積雲(けんせきうん)とも呼ばれる其の雲は秋の訪れを示しているはずである。もう少ししたら秋が訪れるのであろう。猛暑との付き合いもあと数日だと理解して、残り少ない残暑を乗り切るのだと心得たのである。
おいらの家では滅多につくらないメニューの一つが焼きおにぎりだが、酒の締めのメニューとしてはけっこう重宝するものである。地元の居酒屋で何時ものホッピーに酔った後に口にした焼きおにぎりは、とても味わいが深くて酒の肴の上位に推薦したくなったくらいなりなのだった。
提供されて出てきたのは大きめの三角形に握られた焼きおにぎりであった。ご飯に薄めの醤油で味つけたものがベースであり、ご飯の中にはシラスがほどこされている。シラスご飯を薄めの醤油で味付けたものがベースとなっている。
それを居酒屋定番の炭火で焼いていくのである。遠火の炭火で焼かれたおにぎりは、外はカリッとしていて中はもちもち、なんちゃってという表現を受け入れてしまうくらいにそのままの、外はカリッとして中はもちもちとしていた。この表現に衒いや嘘は無いのである。焼きおにぎりを焼くには遠火の炭火が最適だが、ガスの遠火でもこの焼きおにぎりがつくれる。それでも炭火であることに越したことはないだろう。
日本人の体質において「米」の果たす役割は尋常ならざるものがあり、しかも米というのはスローフードのトップランナーである。それを極々スローな調理法にて絶妙の逸品を生んでいる。「焼きおにぎり」とはさしずめ、呑兵衛人の〆の正横綱だということは間違いないようだ。
川越市に立ち寄った際、「若松屋」という焼き鳥専門店を訪問した。東松山流の焼き鳥を提供する有名店だ。席に着くなり先ずは一本のかしら焼きが運ばれてくる。注文しなくても皿が空だと強制的に食べさせられるという仕組み。誰が考えたかしらないが東松山の専門店でもこのスタイルがとられている。軽く塩焼きにしたものに特性の「辛味ダレ」を付けて食べるのが慣わしとなっている。また特に指定しない限り「カシラ肉」とねぎを刺して焼いたものがやきとりの代名詞である。
3本ほどかしらを食べた後で、レバーとタンを注文。焼き加減も程よく、素材の旨味が口に広がってくる。焼き鳥の受け皿の隣には自家製味噌ダレのケースが陣取っており、自分で刷毛を使って焼き鳥にかけて食べる。味噌ダレの味は東松山の店舗のそれよりも辛味が抑えられ甘味豊かな味わいだ。
■若松屋(かしらや)
埼玉県川越市中原町2丁目12-3
何故かは知らずのであるが近ごろ「変わり餃子」に個人的かつ特別なな興趣をそそられているおいらである。地元八王子の餃子専門店には「天津餃子房」という専門店があり、またまた食べたくなって訪れていたのだった。
同店の数ある変わり餃子はどれも餡に一工夫が加えられており、「四川風辛味餃子」の餡にも独特の一工夫がある。詳細については関知しないが、豚挽き肉ベースの餡に、ポピュラーな豆板醤とは異質なる四川料理の調味料が使用されていたことを感じ取っていた。水餃子風のオリジナルな辛味餃子である。基本的な餡の食材は、キャベツやニラの野菜がたっぷりとのったジューシーでいて優しい。胃に優しく身体に優しいことを実感できる。呑兵衛には逸品のメニューとなっているのであった。四川料理はおそらくおいらが思い描いている以上に奥深い調味料を駆使したりしており、奥深い味の中華味をかたちづくっているのかもしれない。
■天津餃子房
東京都八王子市横山町10-18
近頃おいらは何故だか餃子に夢中なり。なかでも「変わり餃子」という種類の餃子を目にすれば無性に食べたくなる。八王子にある「餃子のパプア」という奇妙な名の餃子専門店に足を運んだところ、「トムヤンクンスープ餃子」というメニューを発見。早速注文したところ、期待に違わぬインパクトのある味わいなのだった。トムヤムクンスープとはご存知、タイ国を代表する料理であり、餃子との出逢いがまるでタイの国の定番メニューなのかと思わせるくらいにタイ風なのだった。
そしてもう一品。同店の代表メニューである「パプア焼き餃子」は所謂羽根つき餃子の外見ではあるが、ある種の趣味的技巧的な羽根つき餃子とは異なって、側のモチモチ感やキャベツやニラの野菜がたっぷりとのった餡の奥深い味わいがジューシーでいて優しい。ガツンとして、とても食べ応え満点なのであった。ビールのお供としての餃子の存在感は他を圧倒しているのだ。
■餃子のパプア
東京都八王子市子安町1-8-18
042-697-7244
居酒屋にて「もろきゅう」を食した。「もろきゅう」というメニューで提供されるのが、きゅうりにもろみ味噌を添えたもの。添えられるのが味噌ではなく、一般的な味噌以上にきゅうりの味覚を高めてくれる。一見したところは味噌の一種にも見えるが、じつはこれが、醤油の醸造過程においてつくられるものだという。麦・大豆・米などとそれらの麹を原料にしてつくられる。味噌よりもあっさりしている分、夏のきゅうりには良く似合うのかもしれない。
そもそも「もろみ」とは何か? Wikipediaでは「もろみ(醪・諸味とも書く)とは、醤油・酒などを作るために醸造した液体の中に入っている、原料が発酵した柔らかい固形物のことである。」と解説されている。つまりは醤油や酒や味噌の原料となるべき原料とは、麦・大豆・米などであり、これらの麹がもろみの原材料となっている。塩分がピリリと効いていて栄養素満点であるが、これにピリ辛の香辛料を効かせたもろ味がキュウリに乗っていたのである。夏季には、ピリ辛もろみが身体をピリリと刺激するようであり、ピリリと刺激が効いたもろきゅうは、これからの猛暑の季節にとっておきなメニューと感じていた次第なのである。
夏には夏の野菜である。夏野菜は夏を乗り切る食材として欠かすことができない。この大前提のテーゼを元にして煮込み料理を作ったのだ。煮込み料理には必須の牛筋をまずは用意して、圧力鍋で煮込んでいく。その間の20分程度を使って、夏野菜のゴーヤ、茄子、セロリ、ズッキーニ、パプリカ、等々の夏の野菜を炒めておく。そして圧力鍋で時間をかけて煮込んだ牛筋に、さらに夏野菜を加えてから10分ほど煮込んでこのメニューの完成である。
そもそもおいらが好きな「煮込み」と云えば、一般的なモツ煮込みよりも「牛スジ煮込み」である。牛スジのゼラチン質や繊維質が豊富であり低カロリー、しかも馥郁とした出汁が味わえるというのであり、どこぞの酒場に足を運んだときには先ずは此の牛スジ煮込み料理を物色している。美味い牛スジ煮込みは其れくらいに求むべき酒のつまみでもある。一般的に「煮込み」という料理には「もつ煮込み」と「筋煮込み」が双璧をなしている。おいらの好みはといえば筋の煮込みの中でもとりわけ「牛筋煮込み」ということとなっている。牛筋とはアキレス腱の部分や腱がついた肉の部分を指しており、にはゼラチン質が豊富に含まれており、脂身は少ない。ホルモンの部位とは異なり、あまり小売 店のショーケースには並ぶことが少ないと云う。専門店での調理法が映える部位なのである。
立川にある餃子専門店「ニューヨーク」にて一献。此処の餃子は手作りの手打ちメニューであり、これがニューヨークスタイルなのだという。中華料理の代表的メニューがニューヨークスタイルで味わえるという稀有な餃子専門店である。基本的な餃子のレベルが高いので、基本的な餃子以外の所謂「変わり餃子」も安心して注文することができる。今回食したのはそんな変わり餃子の3品。期待を裏切らない出来栄えであった。
■パクチー餃子(水餃子)
手打ちの良さが生きるモチモチした食感の餃子の皮と餡の旨さを基本にして、タイ料理には欠かせない香菜のパクチーを添えて提供される、水餃子である。清冽なパクチーの香りが、水餃子を一層インパクトの高い個性的な味覚に仕上がっている。
■ニンニクにら餃子(焼き餃子)
通常の餃子にも用いられるニンニクとにらの具材を多めに餡に入れて提供される。ガツンとした餃子の餡のインパクトが舌に伝わってくる。基本的な焼き餃子でありながら個性的なインパクトを有している。
■冷製トマトとバジルの水餃子
夏季の限定メニューとして提供されている。茹でた水餃子のスープに、冷やされたトマトとバジルがアレンジされているのが特徴である。まるでイタリアン風の味付けが水餃子を新しいメニューとしてアピールさせているようである。
■餃子のニューヨーク
東京都立川市曙町2-15-22
http://tabelog.com/tokyo/A1329/A132901/13053556/
猛暑の日々が続いているが、こういう日々こそ食には気を遣わねばならない。近頃は意識して、納豆、オクラ、山芋、メカブ、等々の所謂「ねばり食材」を摂るように心がけている。ねばり食材のネバネバには特有のパワーが有ることが知られている。納豆菌には腸内環境を良好にする要素があり夏季の便秘解消にはとても効果的である。タンパク質豊富であり疲労解消の栄養素ことビタミンB2も豊富に含まれているオクラに含まれるネバネバ成分はペクチン、アラピン、ガラクタンという食物繊維が元になっており、此れまた腸内環境の正常化にとって無くてならないものなのである。
常時食材として置いておくことにより、夏料理との相性ともすこぶる良好となるのだ。例えばご飯にかけてもそのままさっぱりと味わえる。素麺や冷やしうどんの具材としては申し分がない。この季節こそ冷蔵庫にねばり食材は常備すべしと心得ているのである。
先日は夏野菜のスープを作って味をしめたのであり、その延長で今宵もまた夏野菜スープを仕込んでいる。茄子、ピーマン、等々に加えて先日は調達できなかったセロリを加えて、より夏度が高まったと云えよう。茎の部分の瑞々しさと葉の部分の青々しさがとても夏野菜スープにとってはマッチングしており、影の主役級の味覚的存在感が味わえる。
スープを作ってみたところ其等の青野菜の具材を、煮込みハンバーグの具材として利用することが出来ることを発見。直ちに試してみたところ、なかなかの好印象を抱くこととなっていた。
作ったのは煮込み仕立てのハンバーグであった。即ち焼きハンバーグとは少々異なる味付けであり、さっぱりとして青々としたソースがまるで日本料理のような出来栄えだった。夏野菜スープを使った料理はまだまだ活用が可能である。
八王子駅南口からすぐの「小太郎」にて一献。小太郎とは地元の串焼き店での有名店であり、一番の呼び声も高い。今年に入って店舗が移動しており、より広い場所にて営業が開始されている。
この店でおいらがほぼ必ず注文するのが、「玉ねぎベーコン巻き」である。玉ねぎというありふれた食材をベーコンで巻いて串焼きにして出されるのだが、付け合せの専用ダレが絶妙でこれにはまってしまった。ベーコンの脂が玉ねぎに染みて、ポン酢よりあまくさらりとしたタレと相まって、頬がとろけるような味わいなのだ。
美味い焼き鳥、モツ焼きを味わうならば「塩味」よりも「タレ味」だろう。以前に掲示板上で議論に上ったこともあるが、人気ある店の「タレ」にはそれぞれに個性的な工夫が存在するものである。甘ったるかったり水っぽかったりするタレ焼は論外であり、そんな店の焼き鳥は2度と食べたいとは思わない。換言すれば、美味いタレ焼を出している店は、それが故に常連としてしばしば足を運んでしまうことになる。それくらいに「タレ」とは重要な味の要素、店選びの肝となるものなのだ。
■小太郎
東京都八王子市子安町1丁目2−1
夏には夏のスープが欲しくなるのである。本日おいらがつくったのは、夏野菜スープ。冷蔵庫に眠っていた野菜に加え、地元の八百屋で仕入れてきた夏野菜で、夏野菜スープをつくった。用意したのはゴーヤ(にがうり)、ナス、トマト、ズッキーニ、カブ、パプリカ、等々。それらをたっぷり1cm程度のザク切りにして鍋に入れ、軽く炒めた後20分程度じっくり煮込む。味付けは塩、胡椒とコンソメスープとで、すっきり酸味がのどを潤すように、シンプルにまとめるのがポイントだ。ズッキーニ、パプリカ等の西洋野菜はトマトスープにすればとてもまろやかに味わえる。多めにつくって冷蔵庫で保存しておけば、スパゲッティのソースにもなる。簡単でいながらとても重宝する夏の定番メニューである。
主役はやはりゴーヤであった。ゴーヤの表面にある濃緑色のイボイボは夏の汗を象徴するかのように強力なエネルギーを連想させるに充分であり、その独特な苦さとも相俟って、夏には欠かせない食材として定着している。主産地が我が国最南の沖縄であることも、そんな存在感を強靭に後押ししている。
ホタテ貝の炭焼きを食した。二枚貝であるホタテの上手な焼き方を傍で眺めつつ、その貝柱の独特な食感と風味に舌堤を打っていた。
ホタテ貝は季節にほぼ関係なく出回っているのだが、殻付きの生のホタテを味わう機会はまれにしかない。であるからこそホタテの焼き方や味付けが気になるのではある。
バーベキューの食材としても利用されているが、そんなところでの大味なホタテよりも、炭火で時間をかけて焼き込んだものの方が上手いことは云うまでもない。
一回ひっくり返して味付けをするのが基本的な調理法である。その味付けは醤油と味醂が基本であるが、他のものもあっても邪魔でしかない。そういう料理が「ホタテ焼き」だということなのではある。
たっぷりの夏野菜を使って「麻婆夏野菜」をつくった。夏希につくるおいらの麻婆料理は年々進化しつつある。調味料や調理法は「麻婆茄子」そのものだが、茄子に加えて用意した具材は、トマト、ピーマン、そしてエシャレットである。トマトとともに今回はエシャレットを具材に用いてみたら、これがとてもうまく調和しており、且つインパクトも充分な出来栄えだったのだ。4種類の代表的夏野菜をそのまま麻婆料理的に調理したら、トマトの酸味やエシャレットの清冽さが効いていて、とてもさっぱりとしており、暑気払いにはもってこいの味わいなのであった。とてもお勧めの一品である。
オリジナルメニュー「麻婆夏野菜」の調理方法は「麻婆茄子」のレシピと基本的に違いは無い。食材としてトマト、茄子、ピーマン、そしてエシャレットを用意する。通常はネギを使用する所だがネギの代わりにエシャレットを用いることがミソとなる。ひき肉を少々加えるのが中華風だが無くてもかまわない。調味料は豆板醤、甜麺醤、とろみの片栗粉が基本、これに味噌を少々加えれば日本人向けのこくが出る。至極簡単であり、トマトの酸味と麻婆の辛味とがよくマッチして食欲を刺激するのである。
上に示した写真は豚のモツの刺身也。部位はハツとレバーである。何時からだったか牛のレバ刺しの提供が法律により禁止され、生のモツを食べる機会が極度に減ってしまった。今ではごく稀に豚モツの刺身に遭遇することがあるので、そんなモツ刺しを探すなどして下町散策にもいやがおうにも興趣が高まるという訳である。
スカイツリーの城下町風情の趣きを漂わせる押上近辺を散策してふと立ち寄った「松竹」という居酒屋は、まさにそんな興趣を満たすには最適なる店だった。古からもつ焼きが評判の同店なのであるが、昨年にかねてより焼場をまかなっていた前の女将が引退したことにより、今の女将の時代になり焼き物は止めたということなのだという。今どき珍しい、もつ焼きが無いモツ専門の居酒屋なのである。
カウンター中心の、十人少し入れば満席になるという小規模の居酒屋店にて、現女将ひとりでは立ちいかなくなったという。そんな事情が関係してなのか、新鮮な豚のモツ刺しには遠くから訪ねても口にするだけの存在感がある。
モツ刺し以外に食べた「レバカツ」「モツ煮込み」は、下町の良き味わいを感じさせて納得の味わいだった。東京下町の居酒屋で、しかも蒸し暑い空間にて口にしたモツの刺身は、下町に来る度に口にしたいと感じさせるに充分だったのである。