土鍋で炊いた「平茸栗ご飯」で一献

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土鍋で「平茸栗ご飯」をつくった。冷蔵庫に残っていた平茸と栗とを合わせて炊き込みにした秋のご飯だ。土鍋の蓋から上がる蒸気が溢れると、ほかほかとした甘い香りが部屋中に漂っていく。水蒸気が吹き上がらなくなるころからがほんのりおこげご飯が出来ていく過程なのであり、耳を鍋に近づけて、しっかりと炊き上がりを確かめていく。火を止めてそのまま15分程度蒸したら出来上がり。

日本人でありながらこのところご飯食が減っていると自覚しているおいらである。ご飯が足りないのは日本の食文化の基本を蔑ろにすることと近しいのであり、そんな思いから炊き込みご飯作りに勤しんだという訳なのである。土鍋ご飯専用の土鍋に具材を投入し、薄めの出汁と醤油と味醂で味付け。平茸きのこはまるごとを投入していた。これで充分な味わいに仕上がったのだ。久しぶりの「平茸炊き込みご飯」がすこぶる美味かったのである。

秋の炊き込みご飯で云えば平茸のものがおいらにとっては一番である。

蓮根が上手い季節の「蓮根ハンバーグ」なのだ

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蓮根が上手い季節となった。蓮根を見てつくりたくなるのが「蓮根ハンバーグ」である。蓮根をすりおろして熱を加えると、独特の蓮根らしい食感が生まれる。これが何よりも蓮根が生み出す味覚のポイントである。まずは蓮根をおろし、それを手で丁寧にこねてハンバーグの生地をつくる。蓮根だけでは水っぽくて生地としてまとまらないので、山芋などをつなぎとして加えていく。蓮根と山芋をすっておろしてフライパンで熱を加えて焼いた風味は、しゃきしゃき、もちもちっとして口内にまとわり絡み付くような独特の風味、味わいである。

インターネットで検索するとこの「蓮根ハンバーグ」の具として豚、鶏等の肉類を使用しているのだが、これでは蓮根ハンバーグを十全に味わうことなどできない。この風味と食感を味わうことが蓮根ハンバーグづくりの最大の愉しみなのであり、夾雑物は少なければ少ないほど蓮根ハンバーグの真髄が味わえるのだから、レシピもシンプルに行きたいのだ。合わせるソースは和風のものであるが、その具材には、ニラ、エノキ茸、そして豆苗を使用するのが近頃の定番。和風の出汁やとろみにもよく馴染むのでお勧めなのだ。

肉類を一切使わずに、ほくほくとして味わい深い一品が誕生する。実はこれこそ、マクロビオティックの思想に適っているのだ。久々に食したマクロビオティック流「蓮根ハンバーグ」は、胃に染みてホクホクとした食感を味わうことが出来たのであった。

長かった夏を惜しみつつ「シャリキンホッピー」で一献

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今年の夏は長くて暑さ厳しい、猛暑と云ってもよい夏であった。たまに暑さをしのぐのはかき氷ならぬシャリキンの氷を使ったホッピー。すなわち「シャリキンホッピー」なのである。長かった今年の夏を惜しむかのように、シャリキンホッピーを味わっていた。シャキシャキのカキ氷の中身はといえば全くの焼酎であり、焼酎のカキ氷かきごおりというのが正確な表現である。

稀なるシャリキンホッピーに口をつけると、まず初めには苦味走ったホッピーのほろ苦さが咽をくすぐる。そしてその後に襲ってくるのが、キンミヤ焼酎のキーンと来る刺激なのだ。カキ氷の姿と化したキンミヤ焼酎はグラスの表にぷかぷかと浮かんでいて、口をつけたおいらの唇、舌面、咽越しに、ピリリと刺激を与えていく。ぷかぷか浮かんでいるキンミヤ焼酎カキ氷のアルコール度は結構高いのである。心地よい刺激である。これこそホッピー文化が育んだ呑兵衛にとっての理想郷に近いものがある。

二枚貝料理の代表格「ハマグリの酒蒸し」を食する

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行き付けの酒屋で「ハマグリの酒蒸し」を食したのだった。ハマグリは二枚貝の中では大きな部類であり、アサリに比べて食べ応え、噛み応えも大きなものがある。しっかりした味覚もあり、食べ応えの満足感もまた大きなものである。

ハマグリ料理には、吸い物、鍋の具材、等々と様々な活用法があるが、とてもシンプルで味わい深いのが「ハマグリの酒蒸し」である。他にバター蒸しという料理があり、調味料としてのバターがハマグリ料理に独特のコクを与えている。酒蒸しのほうがよりハマグリのシンプルな味を味覚できるのだからこちらのほうかラッキーだろう。栄養的にはビタミンB2を比較的多く含むので、動物的タンパク質ともあいまって、身体に優しい味わいに満たされるのである。

「アジの塩焼き」に舌堤なのだ

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青魚の代表的な鯵(アジ)の塩焼きを食した。アジという魚は我が国ではほぼ一年中出回っているが、今の季節はより脂が乗って、特に美味を感じることがしばしばである。戻りガツオならぬ「戻りアジ」とも呼びたいくらいにその身は活き活きとして食欲を刺激する。

イワシとともに青魚の代表種であり、此の青魚がもつEPA、DHAという必須栄養素の摂取のためにも定期的に採り入れるべき食材なのだ。血液サラサラにする栄養素としてEPA、DHAへの関心は高まっており、この栄養素を摂取するのに生のアジこそがもってこいなのである。日本で食される青魚の代表でもあるのが鯵(あじ)である。「あじ」という名の由来は一説によれば「味が良い」からだとされている。たしかに魚の特有なこくが程よくのっている、美味な魚の典型ではある。鯵の干物にしても、また鯵の丸干しにしても、魚の脂が程よく染みていて、美味しさが一段と増すのだ。身近すぎることからあまり気付かなかったが、この鯵の恵みをこれまでどれだけ享受してきたことだろうか。

萩原朔太郎先生も好んだというカレー専門「ポンチ」の「オムレツカレー」を味わった

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上州国の前橋にはカレーの名店と云われる店舗が数店舗存在しており、そんな中でも旧市街地に在る専門店の「ポンチ」のカレーは、特別なる懐かしい思いに囚われてしまうのだ。
同店ではあまり食べた記憶が無い「オムレツカレー」を食したのだが、流石に懐かしい。今は亡きかつての前橋出身の詩人こと萩原朔太郎先生もかつてはこのポンチのカレーを好んで食していたということなのであり、おいらもそんな郷土の巨匠のエピソードに接して余計に味わい深く感じていたのだった。本日は何が其の要素だろうかと考えていたのだが、上州人はもちろんのこと日本人にとっての懐かしい日本のカレーが受け継がれていると云うことなのであろう。今回はおおよそ半年ぶりの来店だったが、やはり懐かしい思いは格別であった。

■レストラン ポンチ
群馬県前橋市千代田町3-3-18
027-231-2333

上州水上町の「おっきりこみ」はとても懐かしい味だった

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遅い夏休みをとって上州水上町を訪れた。JR水上駅を降り立ってすぐの前には「いわなの天ぷら」をはじめとしたいわな料理の看板があっ! と目を引く。店内を覗くと飄々とした店主らしき小父さんから「おっきりこみが美味いよ」との掛け声がかかる。いわなはおろかまだ食物にはありつけなかったのだ。気を取り直して駅から水上温泉街を散策していた。おいらが少年の頃の一時期には相当栄えた歓楽街であったが、今では其のような面影は、昔式の射的場などに微かに残すのみであり、寂れた温泉街の様相を呈している。食堂と云える店舗はラーメン店、うどん店、等々に行き違っていたが、何だか食欲が沸かないままに、温泉街を一周していたのであり、昼時には駅前の気になる店舗に舞い戻っていた。

店暖簾を潜ると本日二度目となる店主からは「おっきりこみが美味いから是非食べていって」と、いきなりのアッピール。おっきりこみ♪ のフレーズには弱いおいらは、いわなの前に上州郷土の名物「おっきりこみ」をいただくことにした。鉄鍋で煮込まれて出てきた其のおっきりこみの料理とは、ごん太い平麺のうどんがベースで、葱、南瓜、大根、牛蒡、きのこ、蒟蒻、等々の野菜類に加えて上州豚の出汁が効いた甘目の醤油味スープとも相まって、とても懐かしい味なのだ。夫々の食材が素朴に主張しており、ボリューム感も満点の味わい。似た料理に山梨の「ほうとう」があるが、上州の「おっきりこみ」の方がより素朴な郷土食だと云って良いのである。ちなみに同店の看板に在った「いわな」については、この時季は川が暑くて釣ったらすぐに死んでしまうとのことで、いわなのメニューはお休みしているとのこと。またいつか夏以外の季節に水上辺りに旅したら、いわなが食べたいという、一寸ほろ苦い思い出を温めていた。

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八王子「一平」の「自家製厚揚げ」で一献

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厚揚げとはどこのスーパーにも置いてある日常的大衆メニューであり、取り立てて騒ぐこともないのは重々承知なのではある。だがしかし、この自家製厚揚げは特別なものなのだ。八王子の大衆居酒屋「酒蔵一平」では「自家製厚揚げ」というメニューが人気だ。外はカリカリでいて中身はジューシーな絹漉し豆腐の温かく旨い食感が舌を刺激する。群馬の田舎では、厚揚げのことを「生揚げ」と呼んでいる。生のままの絹漉し豆腐をそのまま油に潜らせる。10数分を経て揚がり上がったほくほくのものを、葱、生姜、鰹節をのせ醤油を掛けていただく。まさしくほっかほっかの豆腐の旨みに加えてカリカリとした殻の食感がたまらない旨さのハーモニーを醸し出すのである。

■酒蔵一平
東京都八王子市東町11-5

上州前橋の中華料理店京華の「とまとラーメン」に舌鼓

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上州へ帰省中のおいらは、前橋の旧市街地の弁天通街に在る中華料理店にて「とまとラーメン」に遭遇した。店の前には同店舗一押しメニューとしての「トマトラーメン」の表示があったので、同店内に赴きつつ、ほぼ半分以上は邪道系メニューだろうと高をくくって注文してみたら、これが結構想定外の良き味わいなのだった。

基本的な中華料理のラーメンを踏襲し、イタリアンの要素を追加している。即ち、トマトとチーズが味の決め手となっている、イタリアンなラーメンなのである。

この弁天通りは何度も通っているのだが、実はおいらは此の店に入ったのは初めてのことだった。最初はそんなトマトラーメンの味を疑いつつも、次第に其の味の良さを実感していたおいらなのであった。さらに偶然のことながら、初めて訪れていた同店にて、おいらの父との遭遇もあったのであり、特別な愛着を持ったという次第なのでありました。

http://shunkou.exblog.jp/22136981

■中華料理 京華
前橋市千代田町3-9-2

いつもの居酒屋で「金目鯛の煮付け」にて一献

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いつもの居酒屋にて「金目鯛の煮付け」を食する機会に遭遇したのだ。金目鯛の優雅かつ個性的な外見や洗練された味わいは、高級魚の中でも特筆される。その特別な金目鯛の旨さを最も引き出す煮付け料理にありつけたことはこのところ無かった僥倖に違いない。

おいらは金目鯛が好きである。高級食材としての希少性とともに上品な白身魚の味わいが類を見ないのであり、此れを口にしたときこそ食の醍醐味を感じ取ると云えるくらいだ。金目鯛を煮付けや刺身で食するのは王道だが、そんな機会は滅多に訪れることが無い。

いつだったか伊豆へ旅行した際に期待していた金目にもありつけなかったことがあり、それ以来金目鯛を見ると、あたかもパブロフの犬よろしく口にしてしまうのである。

「なめこおろし」で胃袋のメンテナンスを行うのだ

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おいらはなめこが好きである。最後の晩餐にはコースメニューでなめこ料理をオーダーしたいと考えている。普段に食するなめこ料理は「なめこの味噌汁」であるが、なめこ料理は味噌汁ばかりとも限らないのである。なめこ味噌汁に次ぐメニューはといえば、なめこおろしということになる。おいらはじっと目を凝らしつつ、このなめこおろしの味覚に注目していたのだった。

「なめこおろし」とは大根おろしの上になめこが載っていて、少々の醤油を掛けて味わうシンプルなである。酒の合間のつまみとしても重宝する。大根おろしが胃袋に優しいのであり、しかもなめこにはゼラチンが主成分のネバネバ要素が、ムチンという健康成分を大量に含んでいることから、胃袋の健康維持には特に有効であることが指摘されているのである。

鮎は川魚の味の勇者である

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鮎という川魚を目にするとすぐに食べたくなるおいらである。鮎の本場といわれているのは四国の四万十川沿いであったりして、味覚的偏見人種はわざわざ四国などに出かけては鮎の塩焼きを食べているということだが、そんなことをする必要もなく、関東で提供されている鮎もまた、引けを取ることなどなく美味である。鮎という川魚はシンプルに塩焼きにして食するのが最も味わい深い。これは他の川魚である虹鱒、岩魚、等々の川魚においても云えることなのだ。全身に塩をまぶして炭火で焼かれた「鮎の塩焼き」はといえばまさしく川魚の王者に相応しい。よくある鮎に添えられる蓼酢のような余計なものは無くてよし。無くて更によしの逸品の味わいなのであった。

川魚の代表格として挙げれば、やはり鮎なのであり、その料理も鮎の塩焼きにとどめをさすと云ってよいだろう。こと海無し県こと群馬県にて生まれ育ったおいらの事情を述べさせてもらうならば、日常的に鮎は食べたことがなかった。川魚といっても鮎は特別なのであり、鯉や鮒や虹鱒くらいにポピュラーだった川魚とは一線を画して高嶺の魚だったのである。であるからしておいらも鮎の美味さを知ったのは、高校を卒業して後のこと。しかもかなりの年月を経て20代も後半に差し掛かっていた頃だったと記憶する。

関根精肉店の変わり餃子「ホルモン水餃子」を食す

 

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近頃は何かと変わり餃子が気になり、変わり餃子がマイブームとなっているおいらである。八王子の「関根精肉店」では餡の実がホルモンという「ホルモン水餃子」が注目を集めている。久しぶりに訪れた同店で此のメニューを注文したのだった。

餃子の餡のホルモンは、ニラ等の野菜と国産豚のホルモン数種類が用いられており、ホルモン独特の臭みも無い。通常食べている餡よりもプリッとしてコラーゲン豊富な味覚を味わっていた。鮮度の高い豚肉専門店のメニューならではのことはある。

■関根精肉店
東京都八王子市横山町3-6 JEビル1F
TEL 042-656-1230

八王子市内長浜ラーメン専門店でネギラーメンを味わう

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長浜ラーメンとは字のごとく福岡市長浜発症のラーメンを指し、博多の豚骨ラーメンに近いが醤油味も加えられ、豚骨のみのスープに比べればより複雑で、個性的な味わいなのだ。そして博多麺との違いも際立っている。もちもちとして歯ごたえがあり、これが濃い目のスープに良くなじむのである。

今回食べたのはベースのラーメンにネギを追加したもの。刻んだネギが丼いっぱいに敷き詰められ、箸でまず麺をすくってからネギの新鮮ピリリ感を楽しんだ。此のピリリ感は九州豚骨系ラーメンならではのものであった。

■長浜らーめん 八王子店
東京都八王子市万町32

塩焼きよりも先に「新秋刀魚の刺身」を喰らってしまった

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秋間近であり、秋刀魚が恋しいことこの上無いのである。秋刀魚の塩焼きがとても待ち遠しい限りなり。然しながらおいらは、秋刀魚(サンマ)が美味しい秋を前にして、秋刀魚の塩焼きより先に刺身を食してしまった。冷凍システムの進歩により秋サンマが身近となっているのであり、食べ物屋としてみれば単価の低い旬のサンマを、高い値を付けてメニューに載せられるのであり、願ったり叶ったりなのではあろう。

実際に秋刀魚の刺身を目の前にすると、その名の如くに秋の刀を連想させる。秋の刀は湾曲を描いた刀に違いないが他の季節との違いは判然としない。ともあれ秋刀魚の刺身といえば、その切れ味鋭い切れ身の厳かさに感動すること多かれど、その味わいはそれぞれの時季において異なる感想を抱きつつあったのである。

夏の終わりに「鰻の蒲焼」で一献

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関東地方では涼しい日々が3日間も続いており、漸く秋の訪れを感じるのである。秋の訪れは即ち夏の終わりであり、夏に出来得なかったことなどあれこれ思案するばかりではある。此の夏においてはおいらは美味しい鰻を食ってはいなかったことを思っていた。そんなことを思いつつ、某用件にて神田駅界隈に赴いていたらば偶然に、鰻の蒲焼に遭遇できたのだからラッキーと云うべきなのであろう。

昼食時間を過ぎて午後も遅くなった頃に到着した神田駅ガード下界隈の大衆居酒屋「大越」にて、少々時間的には早いがホッピーで喉を潤していたところ、「鰻重」のメニューを見つけたおいらは、早速店員に質問をぶつけていた。

「あの『鰻重』というのは鰻だけのメニューで注文できますか?」

「大丈夫ですよ。鰻の蒲焼にしますね」

そんなこんなの会話を経て後に、有り難きやの鰻の蒲焼にありついていたのだった。経験的に「うなぎ」が夏の体力消耗に効果ありということを知っているおいらは、無意識裡にうなぎを求めていたのだろう。鰻の脂身は程良く癖があり、其の脂身がたまらない味覚となっている。ダイエットのことなど本日くらいは忘れて食したくなる。我が国の文化とも繋がっている逸品メニューであることは間違いないのだ。

土用の丑の日にはうなぎを食べるという習慣は、文政時代に平賀源内さんが提唱したという説が一般的だが、ただ体力の落ちる夏場に栄養補強するという意味合いばかりではなさそうなのである。かえって、夏場にはうなぎが売れない業者達の苦肉の策として、土用の丑の日が提唱されたという珍説もあるくらいであり、二百年もの時代をさかのぼって時代考証を行おうとしても無理な話であり、ここはそっと、うなぎと平賀源内さんとの個人的な相性の良さを思い浮かべてみるくらいが宜しいのだろう。

■大越
東京都千代田区鍛冶町2-14-3
TEL 03-3254-4053

大塚の鄙びた焼きとん店「富久晴」に立ち寄った

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故郷上州からの帰り道に大塚で途中下車し、焼きとんの専門店「富久晴」にて一献。豚モツの鮮度は以前と同様においらの味覚を刺激したのだった。極めて個人的な事情なのだが、おいらは十数年前、此処大塚に個人事務所を構えていたことがあり、大塚近辺の居酒屋や焼きとんやには深い想い出等が詰まっているのだ。此の場所での事務所を出て以来、昼間の大塚に足を向けたことはあっても夜の店で飲んだことは極く稀であり、ふとした気紛れで途中下車した大塚の街並みとともに、小路に構えたつ店構えの渋い暖簾のゆるゆるとたなびく様が郷愁をそそって堪らなかったのである。

郷愁の情を抜きにして思うのは、生きの良い豚モツが味わえる名店にしては、客が少ないということだった。最初おいらが暖簾を潜って店内に入ると、客は誰も居なかった。先代の親爺から代が代わったのか? 先ずはそんな思いが頭をよぎり、そのあとで先代と共に店を切り盛りしていた女将の姿を目にしてホッとするかの思いであった。味や店構えは以前のままだと感じられるものの、時代の流れからは少々脇に置かれてしまったのかもしれないと思い、なんとも無く悲しい思いを抱きつつ、帰路についていたのである。

■富久晴 (ふくはる)
東京都豊島区南大塚2-44-6 飯田ビル 1F

豚を丸ごと味わえる横浜「豚の味珍(まいちん)」で一献

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横浜を訪れた帰りに、横浜駅すぐ狸小路横丁の「豚の味珍(まいちん)」を訪れた。大都会の横丁である「狸小路」にある呑兵衛にとっての名店である。

同店の売りは何といっても豚の頭から尻尾までの丸ごとが味わえること。豚のメニューだけでも頭から尾までの6種類が用意されている。それぞれのメニューはボリューム満点であり、一人で何箇所ものメニューを味わい尽くすのは困難だ。

先ずは、焼きトンでもポピュラーなる頭こと豚の頭を注文することにした。

マスターが取り出した豚頭肉の塊を丁寧に包丁でさばいて皿に並べられて提供された其のメニューは、一見して中国料理の焼豚のごとき也。中国料理の焼豚は日本的ラーメン店における付け合わせの水分量が豊富な焼豚等とは異なっており、じっくりと時間と味付けとをかけた奥深い味わいが特徴である。同店の頭もその様な調理の工程が経られていており、酒のつまみとしても逸品の味わいなのだ。

味付けのタレはと云えば、小皿にたっぷりの和辛子を入れてそこにたっぷりの酢を注いで、少々の醤油で味を整えるという、同店のオリジナリティー豊富な味付けなのだ。中華料理の食材としての焼豚をもっと呑兵衛好みに、もっと身近に味わえるのである。

頭のメニューを突いている途中で、此れまた呑兵衛の評価の高い漬物を注文していた。白菜の漬物だが、一般的な白菜漬けとは少々異なっている。醤油味がしっかりと染み込んでいて、懐かしい味なのだった。

■豚の味珍
神奈川県横浜市西区南幸1-2-2
045-312-4027

関東で口にする「鱧の湯引き」の味わい

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残暑が厳しい折に立ち寄った店で鱧料理を味わった。注文した「鱧の湯引き」というメニューは、湯引きした鱧の身を丁寧に骨切りをして、梅肉を添えて出される。関西地方の鱧料理の中では定番中の一品である。そもそも鱧の湯引きと云うのは、関西地方ではポピュラーだが、関東地域に於いてはとても特殊なメニューとなっている。新鮮な鱧の身を湯引きする前にとても繊細な骨切りという調理工程を必要とするのだ。この骨切りを上手に出来る調理人は関東地域にはあまり多くはないのだろう。骨切りをしている調理場を見ているわけではないのだが、専門の場所で作られた調理済みの食材を店頭でアレンジして提供された代物だろう。鮮度という点においては些かインパクトに欠け難がありそうだ。

そもそも鱧という魚類は全長1mくらい、もっと巨きいものでは2m以上はあるといい、ウナギ目・ハモ科に分類される魚の一種だという。鰻ほど脂は乗っていないので、その栄養素については軽視されているが、実はこれがとても生命力溢れる魚の一種なのである。鱧のいわば獰猛な顔はその顎と歯の発達した形相において特徴的である。同じ魚類の中では獰猛且つ個性的な種類として特筆できるのであり、その生命力から得られる食材としてのパワーについては注目に値するものなのである。まだまだ残暑が厳しいがときはもう夏の終わりである。こんな夏の終わりの時季に味わったのが、夏の季節感を漂わす鱧料理なのだった。

「戻りアジ」とも呼びたいこの季節のアジに舌鼓

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アジという魚は我が国ではほぼ一年中出回っているが、今の季節はより脂が乗って、特に美味を感じることがしばしばである。戻りガツオならぬ「戻りアジ」とも呼びたいくらいにその身は活き活きとして食欲を刺激する。刺身とともにポピュラーな調理法が叩きであり、今回はそれを食した。新鮮なアジの身を包丁で叩いて細かくして提供される。刺身よりも味がまろやかになり、味わいも増す。

アジという魚はイワシとともに青魚の代表種であり、此の青魚がもつEPA、DHAという必須栄養素の摂取のためにも定期的に採り入れるべき食材なのだ。血液サラサラにする栄養素としてEPA、DHAへの関心は高まっており、この栄養素を摂取するのに生のアジこそがもってこいなのである。日本で食される青魚の代表でもあるのが鯵(あじ)である。「あじ」という名の由来は一説によれば「味が良い」からだとされている。たしかに魚の特有なこくが程よくのっている、美味な魚の典型ではある。鯵の干物にしても、また鯵の丸干しにしても、魚の脂が程よく染みていて、美味しさが一段と増すのだ。身近すぎることからあまり気付かなかったが、この鯵の恵みをこれまでどれだけ享受してきたことだろうか。この青臭い風味というのか、あるいは骨臭い食感というのか、このような魚の個性を認めずに食のコメントするなどとはもってのほかではある。