上毛電鉄に乗って大胡駅にて下車し、そこから上州の名山こと赤城山の南麓へと向かっていたのだった。大胡駅からふるさとバスに揺られて20数分で赤城神社へと到着。樹々の息吹や澄んだ風にやらに囲まれたその大地からは、この地独特の地場とも称すべきものが存在しており、其れこそはある種の神々しさを感じ取るに充分なのだった。赤城山の南麓はと云えばそこかしこに湧き水が湧き溢れ、温泉が湧出している。夜の森には猪の家族が列をつくって更新する姿も見かけるというくらいに、野趣溢れる地域である。都会の生活に行き詰まったりしたときには赤城山を目指してリフレッシュすることが可能である。おいらもそんな神々しい恩恵に浴していたのであった。
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故郷の「前橋まつり」に遭遇
母が病院へ入院して以来、地元の上州前橋に定住気味のおいらである。先日は母も病状回復して病院を退院し、以前からの老人施設へ戻ったが、なかなか東京の生活には戻れず、このまま実家での定住を考えている昨今なり。そんなこんなの本日は、旧市街地周辺にて「前橋まつり」なるイベントに遭遇したのだ。シャッター街などとも呼ばれて久しい故郷前橋の商店街にて、このような祭りが開催されていた。壊れかけている商店街の息吹を快復させようという、関係者の思いが強く圧し掛かってきたものだ。ただ此処で感じたことのひとつには、新しい「祭り」の形態に戸惑う一面があったのもまた確かなり。新しい「祭り」の形態に戸惑うのはおいらが変わったのが要因なのか、あるいは古里の質が変貌を遂げていたからではなかったのか?
高崎駅で「峠の釜めし」を喰らう
所要で立ち寄った高崎で「峠の釜めし」を購入。丁度お昼時であり、乗車までにも時間が在ったので、駅構内にて其の釜めしを喰らうことになっていた。そもそも的に群馬県内の駅弁の中で、おいらは「峠の釜めし」が一番のお勧めである。おいらが幼少の頃から釜めしといえば「峠の釜めし」を指していたのであり、電車旅のお供としても最もポピュラーな代物だった。どっしりとして重量感の在る益子焼きの土鍋の中には、鶏肉味が染みたご飯に椎茸、筍、栗、牛蒡、杏、等々の具材がトッピングされている。やや濃い目の奇をてらわない味付けが、何度食べても恋しくなるほどで、まさしく旅の友としての駅弁の魅力が詰まっているのだ。
■峠の釜めし本舗 おぎのや
http://www.oginoya.co.jp/index.html
前橋産「朝顔菜のお浸し」
糸を引く「納豆チャーハン」は邪道的メニュー
真イカの沖漬けは沖の香り漂う珍味なり
BASEL(バーゼル)富士森公園店の温泉卵、キムチ添えのチキンカレー
昼食時にふと、BASEL(バーゼル)富士森公園店を訪れた。都営の富士森公園を見渡す場所に位置するその「BASEL(バーゼル)」店内のはほぼ100パーセント近くの女性客で溢れている。そんな店内へと歩を向けたおいらは、やはり、相当に気恥ずかしい思いに囚われていたのであった。
そしてランチメニューの中から、チキンカレーを注文。出てきたそのメニューは、じっくりと煮込まれたチキンの味わいがしみて、とても女性客に受けそうだということを合点した。トッピングがまた、温泉卵とキムチである。このビミョーな取り合わせに、男性陣の一人としてのおいらは少々疑問視したのであるが、お腹に入ってみれば、カレーの辛味、チキンの旨味、そしてキムチのピリリ感とが一体となっており、まずくはないことをさらに合点していたのである。
■BASEL(バーゼル)富士森公園店
東京都八王子市台町3-13-4
早々と地元で、秋の花こと彼岸花に遭遇したのだ
秋の彼岸頃の季節になると、妖艶な真紅の花を咲かせる曼珠沙華。今年は少々早くに彼岸花に遭遇したのだった。別名・彼岸花とも呼ばれ、彼岸の日をピークにその満開の時期を迎える。おいらの実家の近くの道端にも曼珠沙華を見かけるが、鮮紅色の花の姿はまるで彼の世の世界からの導きの姿のように魅了しており、思わず顔を近づけてしまう。秋の香り云うべきその香りを嗅ぐと日々の雑念が消え失せるような錯覚にも捉えられていた。
鋭い真っ赤な花弁が咲きまくるその光景は流石の曼珠沙華である。天晴至極の様相を呈していると云ってよい。ところで曼珠沙華とは別名で彼岸花とも呼ばれており、秋の彼岸の到来を示している。今年の彼岸花の生育はほぼ予定通りの生育的スケジュールにのっとっているかのごとくだ。
ところで曼珠沙華の本場は高麗の巾着田である。埼玉県日高市高麗の「巾着田」を取り巻く地域には、100万本もの曼珠沙華が一帯に咲き誇り、その勇姿を人々の目に焼き付けている。高麗の「巾着田曼珠沙華祭り」はいまがはえどき、今年はちょうど、例年に無くピッタリの満開時期に訪れることができたのだった。家の近くの道端にも曼珠沙華を見かけるが、やはり巾着田のその群生する姿は圧巻である。鮮紅色の花の姿はまるで彼の世の世界からの導きの姿のように魅了しており、思わず顔を近づけてしまう。
焼き白貝で晩酌
焼き白貝で一献。通称名が「白貝」「シロガイ」あるいは「サラガイ」とも呼ばれる。外見は文字通り白い色をしており、滑らかで、成長脈と云う筋模様が弱い。大きさは蛤くらいだが、形は青柳やムール貝に近い。生でも食することができるが、蛤のように炙ってバターと醤油を垂らして味わうのが正道だ。少々火を通した方が甘みもコクも拡がっていくようだ。市場では中々見かけないが、魚介専門店、北海道料理店などに行くと時々目にすることがあり、そんなときには注文したくなる。
味は淡白でこれといった癖がない。ビールやホッピーのつまみとして充分だ。色々な貝料理にも使えるようで、検索すれば様々なレシピが見つかった。スーパーなどではなかなか出ないが、今度色々探してみたい食材ではある。
サバ味噌煮で夜食
定食屋のサバの味噌煮で夜食を喰らった。サバを使った定番メニューとくれば、サバの味噌煮、しめサバ、サバの文化干し、蒲焼き、等々となるが、サバの味噌煮は特に昼の定食屋で定番のメニューであり、注文度がかなり高い。そもそもサバは足が速いので、生食されることは滅多に無い。その代わりに保存食として古今東西より珍重されきており、サバ味噌などはそんな珍重的文化メニューの代表格なのだ。そんな珍重的文化メニューを昼の定食のみに押し付けていたことの不条理は、これから明らかになっていくだろうが、それはともあれ夕食のつまみ的食としてのサバ味噌が絶品であることを今日は逸早くキャッチしたのであるから、ラッキーだったと云うべきであろう。
じゃがいも入り、桐生の「ほりえのやきそば」
上州の桐生市内を散策していると、「ほりえのやきそば」という面白そうな店舗に出食わしたのだった。焼きそば専門店であることは容易に理解したが、これだけの焼きそば専門をアピールする店舗は珍しいし、意外性もある。昼食時を逃して散策していたおいらは少々戸惑いがちに扉を開いて、営業中であることを確認しつつ店内へと歩を向けた。焼きそば専門店のメニューとしては、「普通」「大盛り」「特盛り」とそれぞれの肉入りが記されている。おいらは肉入りの普通盛りを注文。出てきたものが写真のものである。
先ずは特徴として挙げられるのがじゃがいもがトッピング具材として使用されていることだ。肉入りにも肉いらずでもの共通のスタイル。これが地元桐生の伝統的な焼きそばのスタイルらしい。濃い目のソース味にホクホクのじゃがいもが紛れ込んでいることで、お腹にたまる満足感がいや増していく。その昔の焼きそばには此の様なお腹満足感を満たすことが求められていたことから、じゃがいも入りの焼きそばがこの地に根付いたという説が一般的なのだ。
このメニュは素朴な味付けでありながら、流石においらもお腹を満たしてホクホクして満足気分にありついていたという訳なのである。
■ほりえのやきそば
群馬県桐生市本町3-5-9
前橋文学館内レストランで「上州もち豚肩ロースチャーシューDon」を味わう
前橋市内広瀬川沿いにの「前橋文学館」内にあるレストランが、先日はリニューアルされ「風河(Fugue)」という名の洒落た欧風スタイルのレストランになっていた。此処でランチを食たのだが、洋風レストランの風貌からは似つかわしくない豚丼に遭遇することになっていたのだった。なにしろご飯物のメニューが3品それぞれ、豚肉丼なのである。洋食レストランの風貌は吹っ飛んでしまっていたと云って良い。
そもそもトントンの街こと前橋の主力食材が豚肉であり、其れが洋風レストランのランチメニューを席巻していたということを目の当たりにし、ある種の喫驚とともに、官民一体としてのトントンの街のアピールにかける思いの強さを感じてもいたのである。
そして提供された丼(どんぶり)の中には、黒々しく大きめの丼器に自慢のロースチーシューが盛られていて、其のチャーシューはと云えばしっかりと味付けられた豚肩ロース肉の食感をからしてナイスな味わいを受け取っていた。チャーシューはと云えばそれほどの豚肉の量ではなかったが、其の身の柔らかさ、味付けの程良さ、等々が相俟っていて、絶品風のチャーシュー丼に仕上がっていたのである。前橋に来たらば食す価値ある逸品のメニューと云ってよい。
■広瀬川バル 風河(Fugue)
群馬県前橋市千代田町3-12-10 前橋文学館 1F
戻りガツオの美味い季節となった
戻りガツオのタタキにありついたのだった。春から夏にかけて北方オホーツク近くの海を漫遊したカツオたちがたっぷりと栄養を蓄えて、日本近海の海へと戻っている。その鮮やか鮮烈な赤みにピンクの刺しが入ったような様は、独特のカツオの脂の乗り方を映している。強烈な海洋魚としての一仕事を終えて、逆に南下のルートを選択させるのだから、それはカツオの生態という現象を超えた自然界の摂理が働いているはずである。
脂が乗っても決してくどくなく、かといって白身魚のような自己主張の薄くて他の食材に頼りがちな食味等とも、明らかな一線を画して、カツオ本来の持つ味わいである。そんな戻りカツオに出会ったおいらは、今年もラッキーであったと云えよう。そして美味しいカツオを食するもう一つの条件が、薬味の存在。茗荷、大葉、葱、という日本的なる薬味の存在が、カツオの刺身をより美味しくさせる。カツオの刺身が逸品のメニューとなるためには此の薬味の存在は欠かすことが出来ないのである。本日のカツオ刺しにはこの薬味がたっぷり添えられていたのであり、たっぷりと美味しく味わうことが出来た。
マグロよりも小ぶりではあるが上品な味わいであり、人間の健康生活に必須の成分であるところのEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)の含有量が多いと云うことが挙げられる。しかも季節の旬を味覚で味わいつつ季節を愉しめるのだからこのうえも無い食材だと云って良いだろう。
牛スジ煮込みうどんでリフレッシュなのだ
本日朝は昨日に煮込んだ牛スジを具にして「牛スジ煮込みうどん」を食してリフレッシュなのだった。この牛スジから出る出汁の美味さは他にないくらいである。おいらが好きな「煮込み」と云えば、一般的なモツ煮込みよりも「牛スジ煮込み」である。牛スジのゼラチン質や繊維質が豊富であり低カロリー、しかも馥郁とした出汁が味わえるというのであり、どこぞの酒場に足を運んだときには先ずは此の牛スジ煮込み料理を物色している。美味い牛スジ煮込みは其れくらいに求むべき酒のつまみでもある。一般的に「煮込み」という料理には「もつ煮込み」と「筋煮込み」が双璧をなしている。おいらの好みはといえば筋の煮込みの中でもとりわけ「牛筋煮込み」ということとなっている。牛筋とはアキレス腱の部分や腱がついた肉の部分を指しており、にはゼラチン質が豊富に含まれており、脂身は少ない。ホルモンの部位とは異なり、あまり小売 店のショーケースには並ぶことが少ないと云う。専門店での調理法が映える部位なのである。名店の「牛筋煮込み」は、ほぼ飲兵衛たちの支持によって長い命脈 を維持しているのだと云っても良いのだろう。近頃の好みは〆として素麺にかけて食べることだ。これも文句なしにGoodだった。そうして今宵も酒が進むのである。本日もまた地元のスーパーマーケットで新鮮な牛スジを仕込んでいて、自家製の牛スジ煮込みづくりにチャレンジしたのだった。購入した牛スジを3〜5cmにカットして、その他、人参、玉葱、蒟蒻の具材を用意して、圧力鍋にて煮込んだのだ。味付けは少量の醤油と塩と生姜の細切れのみであり、牛スジから滲み出る出汁とコラーゲンが味の決め手となっていた。
「秋刀魚の刺身」は秋の季節を待ち遠くさせるのだ
秋刀魚の刺身を食する機会が持てたのだった。秋間近の昨今であり、秋刀魚が恋しいことこの上無いのである。秋刀魚の塩焼きがとても待ち遠しい限りなり。然しながらおいらは、秋刀魚(サンマ)が美味しい秋を前にして、秋刀魚の塩焼きより先に刺身を食してしまったということになる。冷凍システムの進歩により秋サンマが身近となっているのであり、食べ物屋としてみれば単価の低い旬のサンマを、高い値を付けてメニューに載せられるのであり、願ったり叶ったりなのではあろう。実際に秋刀魚の刺身を目の前にすると、その名の如くに秋の刀を連想させる。秋の刀は湾曲を描いた刀に違いないが他の季節との違いは判然としない。ともあれ秋刀魚の刺身といえば、その切れ味鋭い切れ身の厳かさに感動すること多かれど、その味わいはそれぞれの時季において異なる感想を抱きつつあったのである。けだし「秋刀魚の刺身」は秋の季節を待ち遠くさせるのだ。
赤羽「まるよし」のもつ焼きで一献
赤羽という街は呑兵衛たちにとっての聖地であり、おいらもちょくちょく途中下車しては、酒と其れにまつわるあれこれを求めている。故郷群馬から帰京する途中で、赤羽にて途中下車して大衆酒場「まるよし」にて一献傾けていたのであった。ホッピーやもつ焼きが主メニューのありふれた酒場ではあるが、今では希少となっている「コの字居酒屋」の名店である。こんな酒場でホッピーを飲むことはありふれていそうで決してそうではなくて、とても有り難い機会の一つと云えるのかもしれない。いつものホッピーを注文しつつありふれたもつ焼きやらっきょうを頬張る機会は、あまり訪れるものではなくなってきているのである。もつ焼きの他にもモツ類の刺身があるが、食べたかったコブクロ刺しは品切れなのでありお預けとなってしまった。また同店を訪れる理由付けともなり、益々この店が貴重に感じられることとなっていた。
■まるよし
東京都北区赤羽1-2-4
03-3901-8859
赤エビの握り寿司に舌鼓
回転寿司の店にて「アカ海老」という寿司だねにありついたのだ。その身は大きく生で食する食感を満たすようであり、しかもぷりぷりしすぎず、新鮮なる海老の甘味に魅せられていた。アカ海老とは車エビ科に分類され、赤褐色の体色が特徴である。赤褐色の殻をむいてみると、白く身の締まったエビの身が現れる。これがコリコリしすぎずにエビの甘味をダイレクトに舌に伝わるのである。中華のエビ料理がつまらなくなる。やはり海老は生で食するに限るのである。
高級中華料理店にて食材偽装事件が相次いでいるおかげで、海老料理に接するたびに、この海老は本物か否か? 偽装食材か否か? 偽装の手口は? 等々の猜疑心が湧き上がって仕方がない。中華料理の業界にとどまらず、大きな海老は「大海老」、小さい海老は「小海老」と表記して逃げているという外食産業の現状が垣間見れる。小さな海老が芝海老なのかバナメイエビなのかの違いは、食の素人こと大勢の一般人にとっては判別しがたい。さらにブラックタイガーと車海老の違いなど、調理皿に乗った料理を見て判別がつくものではない。そんな素人の弱みに付け込んだ食材偽造なのだから、極めてたちが悪いと云わねばならない。
鶏肉が相性良しのスープカレーを味わった
カレーがスープの様に使用されている「スープカレー」を味わった。鶏もも肉のカレー煮込みが大きく配置されており、逸品のカレー料理となっている。そもそもは北海道の札幌で誕生したという「スープカレー」。口コミなどからブームを発生したとみえ、近頃では東京でも頻繁にお目見えすることになった。さらっとした(つまりドロドロとしていない)カレースープが特徴なのだが、何度か口にするたびに思うことがある。このスープカレーこそは和風カレーの一つの方向性を示す料理ではないかということだ。先ずはこのスープの和風な風味。このスープの出汁はといえば、鶏ガラ、豚骨、そして鰹節等がミックスされて大切に仕込まれている。店によっての違いはあるが、まるでラーメン店のスープのように、時間をかけてじっくりと仕込まれている。
そもそも印度や英吉利におけるカレー料理というのは、スパイスが効き過ぎているほどにきつく喉を突く。辛味だけではなく、各種のスパイスが主役となっているような料理である。それに比べて和風カレーというものは、何とマイルドなことであろう。小・中学校の給食で出されたカレーこそは、和風カレーのある種の典型を示している。だがそれ以上に日本人の味覚に合わせるようにして、スープカレーは誕生したのではないのかと、密かに感じ入っていたところなのである。
酒も食欲も進む前橋「たむらや」の味噌漬け
ある人のお土産で前橋「たむらや」の味噌漬けをいただいたのだが、これがすこぶる旨くて、夜には晩酌が進み、昼には食欲が進むことこの上なく、多分またまたカロリー過多のメタボ的なる生活習慣に陥っているのではないかという不安もまた沸き上がっているくらいなのではあるのだ。
味噌漬けという漬物の王道を行くように、濃い目の味噌にじっくりと漬けられているその味噌漬けの数々は、胡瓜、人参、大根、と云った定番ものから、生姜の漬けたものまでバリエーションが豊富である。生姜を丸ごと漬けたその味噌漬けには驚かされた。じっくり漬け込まれてサクサクとして柔らかくて、しかも生姜のピリリとした程よい刺激さえもが生々しく口腔を満たしていのだから、驚かされて然りだったのである。
■たむらや
千代田本店
群馬県前橋市千代田町4-9-5
大宮の「酒屋の隣」の日本酒で一献
東京から上州へ帰省する途中で大宮に立ち寄った。その立ち寄った店というのが、なかなか個性的な立ち飲み店だった。大宮駅から西口を降りて4~5分歩いたところに在るその店舗は、石丸酒店という酒屋の隣に在ることから店舗名も「角打ち 酒屋の隣」と云う。造り酒屋の隣のスタンドBarという個性的な佇まいが興趣をそそるのであり、おいらはその店に誘きられるかのように門戸を潜っていた。店舗名はオーソドックスであり、半面的にその門戸の佇まいは一見客がほとんど判別しがたいくらいに控え目に見えていたのである。隣が伝統的店構えの酒屋で此処が立ち飲み居酒屋。けっこうな普通っぽいシチュエーションでありながら実際の店舗の風情が見せる其の佇まいは、決してありきたりな光景ではなかった。
店内には埼玉県内の酒蔵のものを含めて数多くの日本酒の酒瓶が並んでいる。ここはさしずめ日本酒蔵が経営する日本酒のバル(Bar)かと彷彿とさせているのである。とりあえずおいらは地元埼玉に蔵元を有するという「豊明」を冷にて注文してみたら、其れは軽くグラスの中にどぶろく風の沈殿物を湛えていて其れがグラスの中に漫遊する様がとても興趣をそそっていてしまったのであり、しかも口にした其の味わいがふわっとして刺激的な、何とも云えぬ口当たり感のものだったので、とても驚かされていたのである。此の「豊明」という酒は、製造過程に様々な工程を経ることにより、一般的な日本酒にはない独特の口当たりが生まれているのだ。そしてもう一つ口にしたのが、地元埼玉の銘酒として評価の高い「神亀 ひやおろし純米」をゆる燗で味わったのであった。こちらは正統的な日本酒の口当たりで、飲みやすくて、しっかりとした純米の旨味が染み込んでいるのだった。
酔に潰れてはいかんと三杯程で店を去ることになったが、日本酒の良き味わいを再認識するにふさわしい居酒屋体験であった。
■角打ち 酒屋の隣
埼玉県さいたま市大宮区木町2-403