大竹昭子さんの「図鑑少年」に嵌ったのだ

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「大竹昭子」という名前はとても気になる名前である。過去何度か、写真評論の文章に接していたが、作家や作品への洞察を通して時代の息遣いが渦巻いており、それを濃厚で香り高い料理を口にした時の様な刺激とともに感じ取ることができたのだ。

昨年10月に文庫本として出版された「図鑑少年」は、雑誌「SWITCH」と「フォトコニカ」に掲載されたものを纏めた小品集で、初出は1999年3月、小学館発行とある。小説も書いているんだなという興味で読み始めたが、久々にのめり込むことができた1冊であった。

決して新しい作品ではないが今読んでも色あせることの無い、現代人の息遣いが横溢している。大都会とそこに蠢き漂流している人間達との関係性が、まるで都会からの視点で描かれている様な不思議な感覚に包み込まれるのだ。何気ない日常と不可思議なストーリーを結びつけるのは希有な作家の想像力だが、それ以上に深い非日常性の魅力に嵌ってしまうのだ。傑作小説集と云うべきである。

都会生活の不思議な断片を描いた大竹昭子さんの短編集「図鑑少年」

大竹昭子さんの「図鑑少年」を読んだ。

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書店でふとして手にした文庫本を開くと、見覚えのあるモノクロの写真ページが目に飛び込んできた。かつて90年代にて栄華を誇った「SWITCH」というグラビア系雑誌に連載されていた写真であることが、解説文を読みつつ、次第に記憶の上に詳らかになっていった。1999年には小学館から単行本が出版されたとあるが、これには見覚えがなかった。おいらの記憶的ビジョンに鮮明に染み付いていたこの本の光景は、90年代のものとして焼き付いてしまっていたのである。10数年を経ての再会とでも云おうか、あるいは10数年間のワープを経てのドラマティックな再邂逅とでも呼ぼうか…。

各章を隔てる栞のように挿入されたモノクロ写真ページは、作家の大竹昭子さんが自ら撮影したものである。都会を散歩すればすぐにでも遭遇するような光景ばかりでありながら、けれども不思議な光景として目に焼きついてくる。都会風景の上面をじっと眺めてみたりすればするほど、裏面から湧き上がって我々の視線を釘つげにしてしまう不可思議な風景が染み付いて放さないのだ。

24編からなる掌編的物語のほとんどは、日常的な都会生活上にふと生じた違和感が語られていく。短い物語と物語とを繋ぐのはまた、時を隔てた時間であったりする。あるいは時と場所とをワープされた空間であったりするのだが、そのギャップに驚かされるとともに、不思議な物語的世界にはとても時めかされてしまったのでありました。