寒くなるこの時期には「百合根」が八百屋やスーパーの食材コーナーに並ぶ。昔は関東人には縁の無かったものだが、北海道、東北などの北国では古くから食材として用いられている。また関西でも吸い物や茶碗蒸しの具として食されてきた。それ以前から、寒い季節の体調管理に利く薬効豊かな食材として用いられてきたという歴史もある。
名前のとおり「百合」の根の部分。特に「コオニユリ」という品種が食用に適するとされている。花が散って根が膨らみ秋になると収穫される。収穫までには3年程度の時間がかかることから高価であったが、最近は値段も下がり身近な食材となってきた。
花弁にも似た百合根の鱗茎を一つずつ丁寧に剥がし、茹でたり蒸したりして使用する。熱を通すことによりもちもちした独特の食感が生まれるのだ。乾燥させたものや粉末にしたものも出ているが、やはりこの時期のものは生ものが望ましい。
この日は葱、牛蒡とともに卵とじにして調理した。じっくり出し汁で5分程度火を通すと白い百合根が透明色に変わっていく。卵をさっとかけてどんぶり御飯の上に乗せれば、「百合根丼」の出来上がり。品のある百合根の独特の甘味が舌に残る。身体に程よい刺激感を与えられた気分なり。時々食したい素材なのだ。