最近の沖縄料理店ではよく見られるメニューである。沖縄地方の近海に多く生育し、2~5メートルの茎を持つ。この茎に小さな粒状のプチプチした枝が分かれており、これにポン酢などをつけて食べる。学名では「クビレズタ」と呼ばれている。
昔は物珍しさで注文していたが、近頃では沖縄料理店にこのメニューがないと物足りないと感じる。チャンプルーの類は特段、個性的な料理ではないが、この「海ぶどう」は沖縄の食文化の伝統を強く訴えかけているのだ。
暑苦しい夏も過ぎ去ったようだが、居酒屋メニューもここへ来て様変わりの様子だ。近頃目に付くのが「生牡蠣」「酢牡蠣」といったもの。メニューを眺めているうちについつい注文してしまう。
おいらは以前、この「生牡蠣」に苦しめられたことがある。食べた場所は赤坂の居酒屋チェーン店であった。友人との酒が進み、酒のみならず牡蠣のほうも、何杯も何杯も注文した覚えがある。小沢一郎派の拠点として最近のニュース映像に出てくる「庄や赤坂店」ではなかったかという記憶もある。ニュース映像で店舗を目にするたびに、牡蠣にあたった時の苦い想いがフラッシュバック的に襲い掛かるのだ。
その後数ヶ月間は生の牡蠣を控えていたが、いつの間にか食べていた。やはりこの生牡蠣の独特な味わいは何にも換え難きものなり。するするっと口に入れたときの喉越しは他に無く、そのときのほのかな香りも尋常ならざるものかある。香りに吸いよされるようにして食らうこともしばしばなのである。
「海のミルク」という評価が定着しているが、おいらはちと疑問を持つ。豊富なタンパク質には独特のアミノ酸を有しており、亜鉛等のミネラル分もミルク以上に豊富に含まれる。しかも見た目からして「ミルク」との類似性は認めがたいものがある。
近頃ではメニューも変化して、「牡蠣のグラタン」なるものまで出現した。フランス料理かと思えば必ずしもそのようではないらしい。和製フレンチの極みなのだという説もある。
ところで牡蠣を生食することはフランスから移入されたものだという。生食のメッカとしての我が国を差し置いて、フランスが逸早く牡蠣の生食を取り入れていたというのだ。この説についてはフランスに分が有りそうなのである。
蛸は一般的にアホ馬鹿野郎の象徴とされるが、ただし口は達者である。意味の無い、あるいは無価値の言葉ばかりを矢継ぎ早に口にして自分の言葉に酔う様は、さながら寅二郎映画に出てくるたこ社長そのまにて、世に蔓延るものではある。そのほとんどは内実の無い詐欺師の実態ながらも、口先八丁で世の中を泳ぎ回るのだ。全くもって不条理というしかない。
脳の中身は空っぽなれども口だけが達者で世の中を泳ぎ回る馬鹿社長、おっと違った蛸社長、そんな蛸の口を取り出して火で炙ってみたならば、結構美味かったということを発見したのです。
そのメニューの名は「たこのとんび焼き」。コリコリとした軟骨の食感がなんとも云えない。ガスの火で炙れば上質のモツの様でもあり、しかも磯の風味も楽しめる。なかなか侮れないメニューなのでありました。
たまにはタコ馬鹿社長の口先をちょん切って食べてしまおう。そんな気分にもさせる珍味なのである。ちなみにタコには「タウリン」という必須アミノ酸が豊富に含まれており、生態活動を行なうにとても良い栄養素なのだから、沢山食べてみるに越したことは無い。
名古屋市議会のリコールで忙しい河村たかしが、果たして「えりゃー、うめぇーよー」と云ったかどうかは定かではないが、名古屋の面白い名物を見つけたので報告しておきます。
その名も「赤味噌ラガービール」だ。食堂のメニューには「名古屋の『赤味噌』と麦芽の旨味が融合した名古屋の味」とある。立て看板にも「コクがあって、まろやかで飲みやすい。飲んだ後にほのかな味噌の香りが楽しめます。」とある。早速それを注文することにした。呆気に捉えられたというのが事実であるが、その実態を知りたくて、同ビールを注文してみたのだ。
一口飲んで甘い。コクが強くある。そして、やはりというべきか、赤味噌風味が感じられた。名古屋の赤味噌が甘辛く濃厚であることとの同印象である。名物としては悪くない。一言おいらの好悪で判断すれば、やはり甘辛くて、非常にくどすぎる。名物だからこそ口に出来るげてものの類いといえるかもしれない。
名古屋名物といえば「手羽唐揚げ」だとばかりに思っていた。そんなところへ突然に飛び込んできた「赤味噌ビール」である。だが色々地元には面白いものがあるようだ。
先日から「B級グルメ」のことを書いてきたが、ここで忘れてはならないメニューがあることに気付いた。それは愛知県地方を中心にして根付いた「どて煮」である。牛スジを主な素材として、それ以外のもつなども加えて、愛知の八丁味噌と味醂、砂糖などでじっくりと甘辛く煮込むというものである。
大阪の「どて焼き」より以上に濃いたれが特徴であり、最初にこの味に慣れるには時間がかかるのだが、何度か食していくうちに自然と食指が沸いてくるという、まさにB級グルメに相応しいメニューなのだ。この味に慣れた名古屋人ならば、おでんの出汁にこのどて煮汁を用いてぐつぐつ煮込んだものがポピュラーとなる。この名古屋風どて煮込みおでんの味わいも捨てがたい。
愛知県の串カツ屋においては、このどて煮に漬けて出されるのが一般的である。それが関西にもわたって、愛知風の「どて串カツ」として流通している。名古屋産の大阪名物ともなりつつあるようなのだ。
西武新宿線の「野方」駅を降りて1~2分を歩けば串焼き屋の名店「秋元屋」に出くわすのだ。開店前から行列が出来るという人気居酒屋であり、ラーメンは無いがそれ以上の居酒屋グルメ垂涎のメニューがマニアののどを唸らしていく。
なかでもおいらの一押しは「もつ煮込み」なり。何しろもつの鮮度が半端ではない。一般的な焼肉屋に出される素材の上質な部位のものを、朝どりされた新鮮なままを煮込まれてぷちぷちもちもち、噛んだら涎とともに、もつの煮汁の旨みが口腔のすべてを席巻してしまう。一人前では足らずに2杯注文していた猛者も目撃している。
せんべろの範疇には入らないが、当店のメニューの値段はおおむね安価であり、勘定を気にすることなく思う存分にべろべろになることも可能である。
ちなみに秋元屋には「シャリキンホッピー」というメニューもあるので、ホッピー党には願っても無い呑兵衛の聖地として記されているのである。
■秋元屋 (あきもとや)
東京都中野区野方5-28-3
http://r.tabelog.com/tokyo/A1321/A132104/13006667/
9月18、19日に厚木市で開催された「B-1グランプリ」で「甲府鳥モツ煮」がグランプリに決定した。本年が第5回目の開催ということで、43万人(主催者発表)もの参加者を集めたという。厚木といえば「シロコロホルモン」がかつてグランプリ受賞したこともあり、B級グルメで町興しにはことのほか熱を入れている、B級グルメの聖地といった場所でもある。
先日甲府を訪れた際に、おいらはこの「鳥もつ煮」を味わっていた。鳥のもつといえば焼鳥の材料として馴染み深いが、味付けは大分異なっている。使われるたれはとても濃厚で、甘さが際立って強い。少量のたれにより強火で一気に煮込むのだという。
甲府の蕎麦店で開発されたメニューであり、淡白な蕎麦を食べながら、口直しに「鶏もつ煮」と日本酒で晩酌というスタイルが、これから流行っていくかもしれない。
久しぶりに「西荻窪」駅に途中下車した。目指したのは北口から1~2分程度の「戎」。毎日地元の酔客で賑わう居酒屋の名店である。同店のメニューの特徴は、基本的なレシピを元にしながら少々変わった、アレンジした独自のメニューを提供することにある。だからこそ毎日絶え間ない酔客を呼ぶのである。
本日味わったメニューは、以下の通りなり。
■キス南蛮漬け
ポピュラーなのは「鯵南蛮漬け」であるが、「キス」であることが特異である。鯵よりも少しく大きめな、淡白な白身である。そのようなキスを素材にして南蛮漬けにすることはとても理にかなっている。あまり他では見ないが、確かに「理にかなっている」メニューである。
■セロリとシーチキン、アボガドサラダ
あまり無かった取り合わせのサラダである。シーチキン(マグロ缶)は中和材料であり、「セロリ」「アボガド」といった、意外な食材の組み合わせに驚きつつ、箸を突付いて食べてみれば中々いけるぞと納得するのである。
■焼きトン串焼き
同店の看板メニューであり、しかもすこぶる安い。その日によって、「コブクロ」「テッポウ」等の特別なメニューを味わえるのである。
魚介を串に指して焼くというシンプルなメニューが、増えているようだ。近頃は専門店までも登場しているらしい。
先日食したのは、海老、烏賊、帆立、鮭、シシャモ、鯖、キス、等々を串焼きにしたものだ。それぞれに焼き物として出される食材であり、調理法は軽く塩をふって炭火で炙るくらいのもの。それが一口ごとに多種類を味わえるのだから悪くない。理にかなったメニューである。
何故これまで、このようなメニューが無かったのかと考えてみた。基本的な調理素材として「焼き鳥」用の炭火焼器と炭があれば充分である。備長炭ならば良いのだろうが炭であれば事足りる。たとえ炭火でなくともガスの遠赤外線焼物器を使用しても、家庭のガスコンロでは出せない遠火焼きが可能だ。
それ以上に大切なのは、焼き方。すなわち熟練した職人による焼き加減である。焼き鳥屋、居酒屋といった関係店舗も売り上げが減少し、稼動しない炭火焼器を休ませているのもままならない。新しいメニューを考えざるを得なかったということかもしれない。
たった1000円でべろべろに酔えるというのがせんべろである。そうしたせんべろ居酒屋探検を遂行しているおいらであるが。中野の「極楽屋」のメニューが秀逸であったのでレポートしておこう。
豚足焼き(450円)
むちむちっとした食感を損なうことなく焼き上げた「豚足」は見事というしかない。しかもその皿には、3つの豚足のために、3枚の新聞紙が用意されて出てくる。焼いた豚足は脂っぽいから新聞紙で手を保護してください等といった、細やかなるおもてなしがナイスなのである。
いぶりがっこ(300円)
秋田の名物なり。いぶりがっこを秋田人にばかりに独占させておくのは不条理である。この「極楽屋」で提供されているいぶりがっこもまた、秋田の味覚を東京人への橋渡しをしているようであり、注文も途絶えることが無いようなのだ。お勧めである。
信州の大町は黒部ダム観光の玄関口として有名だが、民話と日本酒づくりが盛んな町でもある。町なかには三つの蔵があり、それぞれに「金蘭黒部」「白馬錦」「北安大國」という銘柄酒を製造している。
夕方になり街を散策していると、風情ある暖簾のかかった居酒屋が目に付いた。その一軒に入ってみたところ、「原酒3点セット」というメニューが飛び込んできたのだ。おいらは迷うことなくそれを注文。グラス製の洒落たお猪口に3種の原酒を注いで出されたその光景は、目と嗅覚とを虜にし、喉に流した原酒はピリリとしてとても刺激的に感じられた。
東京では中々こんな体験はない。まさに大町でしか体験できない種類のものだったと云えよう。いつかまた大町に来て、ここの日本酒酒場を踏破したいと、密かに願ったくらいなのでありました。
昼間は定食屋をやっている居酒屋に立ち寄って、「ブリの照り焼き」を注文したところ、その懐かしい味わいにとても染み入っていたのです。
そもそもブリの照り焼きというメニューは、おいらの田舎ではそれほどポピュラーとはいえないものであったが、その後上京し、このしっとりした脂が乗ったブリの照り焼きに出合った。その甘辛の調理の妙こそは、日本食の原点を示していると云っても過言ではなかろうという、いわばある時点でのおいらの思い込みにて、当時そればかり作っていたものである。週に何度も同じメニューを試行錯誤して調理し、そして口にしていたブリは、おいらに調理の楽しみを発見させるきっかけにもなっていた。苦学生の時代の古き良き記憶でもある。そんな特別のメニューを、知らぬ間に口にしながら、懐かしい気分に満喫していた今宵なのです。
ご存知のように「照り焼き」という調理法は、醤油、砂糖、味醂等を調合した甘辛の調味料を食材に塗り、上面から炎を炙って焼くというものである。まずは時間がかかる。ガスコンロもそれなりのものが必要である。おいらの学生時代のアパートにあったコンロは、いい加減なものであったが故、ほとんど満足すべきメニューの完成をみないままであった。そんなほろ苦い想い出も混在するのだ。
地元の食堂で出された「ブリの照り焼き」は、その点でも満足できるものであった。ブリの皮は焦げて黒く、それを剥いでみれば、甘辛味の染み込んで香ばしいブリの身が嗅覚、味覚を刺激したのでありました。
「サワガニ(沢蟹)」といえば、昔は田舎の温泉地などでよく見かけたものである。川岸の岩陰で、あるいは露天風呂の隅に、よく観察すればすばしっこい動きをみせていた。海を持たない山岳地域における風物の一つでもあった。
今日はさる沖縄系居酒屋料理店にてそんなサワガニの蠢く水槽を目にし、とても懐かしく思いながらも、揚げ物にする「サワガニ(沢蟹)のから揚げ」を注文してしまったのである。昔の少年時のことを想えば決してサワガニを食べてしまったことなどはなかったのに、大人になった今では多少は迷いつつも「サワガニ(沢蟹)のから揚げ」など食べてしまうのだから、大人の人間とは至極勝手な生き物である。
そんなこんなを感じつつも、カリカリッとして香ばしいサワガニの甲羅は美味であった。更に少量であるが身の中に詰まったサワガニの味噌というものは、これまたいちどお試しあれの珍味なりと感じたのでありました。