春の香りを届ける菜の花料理

寒さはまだ当分続きそうだが、一足早い春の香りがする菜の花料理に出食わしたのです。

そもそもおいらが子供の頃には、菜の花は観賞するために在る花であり、食用にされることすら思い描けなかった。それが江戸の街に出て以来、食用に供されることを知り驚いたという、カルチャーショック的体験があった。

それかあらぬか、菜の花のほろ苦い繊細な香りには、ひと際愛着を持っているのだ。黄色い花を咲かせる前の閉じた蕾の中から溢れる滋味こそ、早春の味わいである。

菜の花の辛し和え

おひたしにしただけの菜の花も充分に美味だが、ひと調味料が加わって、立派な料理になるという見本のような料理だ。春のほろ苦い苦味が辛し味と出逢い複雑な春の味となるのだ。

菜の花と桜海老のかき揚げ

どういう因縁なのかは分からないが、相手素材に桜海老が組まれている。桜海老の旬にはまだ少々早いのだが、イメージ的には春の味わいを演出している。玉葱や他の野菜類を組み合わせるよりは、菜の花の繊細さを削ぐことがないので、そういう意味ではなかなかの組み合わせといえるだろう。

東京下町台東区にて今季初の「あんこう鍋」を食す

先日下町の台東区に出向いた際に「あんこう鍋」のメニューに導かれるようにして今季初めて食したのが、上に示した写真の鍋である。

寒い冬ともなれば、冬の鍋の極北とも思える「あんこう鍋」が食したくなる。そしてあんこう鍋の本場、北茨城の平館地方に行きたくなるのだが、なかなか時間と財布が許さないまま今季も時を過ごしていた。

そんなときに偶然にもありつけたあんこう鍋は美味だった。あんこうの肝臓がドカンと目の最も近い前に乗り、さらに様々なあんこうの内臓類がどっさり丁寧な包丁さばきの跡も鮮やかに盛り上げられていた。しかも味噌味とくる。本格的なメニューなのだ。

火を通して数分後、ぐつぐつとして沸きあがる鍋の奥の奥の下からは、味噌スープに溶け込んだあんこうの香りが鼻を突いたのだ。それくらいにワイルドなあんこうを堪能した。値段はといえば大衆食堂料金の1,200円であった。これをラッキーと呼ばずにはおけようかとの思いが駆け巡っていた。

あんこうの身は引き締まっていて、しかも小骨や軟骨に絡まっている。この身を手でとって、一つひとつを口や指で掻き分けて味わうのがあんこう鍋の食し方でもあり、最大の愉しみでもある。

豊穣なるコラーゲンが豊富に含まれているだろうホクホクのあんこうの身を手に取り、口に含めて、至極満ち足りた気分を味わうことになったのです。

美味い焼き鳥は「タレ味」が基本なのだ

久しぶりに焼き鳥専門店へ出かけた。多摩地区では1~2位という評価のある「小太郎」という店だ。高尿酸血症のおいらにとって焼き鳥やモツは大敵なのだが、かといって我慢ばかりしていられる訳もなく、時々足を運んでしまうのは避けられない。

それはともかく、美味い焼き鳥、モツ焼きを味わうならば「塩味」よりも「タレ味」だろう。以前に掲示板上で議論に上ったこともあるが、人気ある店の「タレ」にはそれぞれに個性的な工夫が存在するものである。甘ったるかったり水っぽかったりするタレ焼は論外であり、そんな店の焼き鳥は2度と食べたいとは思わない。換言すれば、美味いタレ焼を出している店は、それが故に常連としてしばしば足を運んでしまうことになる。それくらいに「タレ」とは重要な味の要素、店選びの肝となるものなのだ。

その点、ここ小太郎のタレは甘くなく、炭火で焼くにつれて鳥や豚のモツ肉にじっくり染み込んでいく、ナイスな仕上がりである。炭火とタレとの相性が絶妙なのだ。塩焼きで焼くモツも悪くはないが、タレ焼の持つ特別なハーモニーを感じることは出来ないのだ。

■小太郎
東京都八王子市子安町1-7-8
http://yakitori-kotaro.com/

生姜が効いた冬の「モツ鍋」でほっかほっかに温まったのでした

寒い寒い冬の真っ最中である。こんな日の夕食、晩食には鍋料理が食べたくなるのは古今東西の人間のならわしなり候。

と云うわけで、地元に近い某居酒屋にて、生姜味の「モツ鍋」を味わったのです。いろいろと味付けに注文が出来るスタイルの同店鍋にて、おいらは生姜鍋を選択。そしてモツを食材とした鍋が、テーブルに持ち運ばれたのでした。

半分程度火に掛けられてテーブルに運ばれたその鍋は、キャベツ、ニラ、モヤシに加えて生姜がたっぷりと盛り付けられていた。流石「生姜味」とメニューに記すだけのことはある。もちろんモツの食材も含まれてはいたが、それほど目に付くものではなかったのでモツ関連のレポートは省略する。

肝心のモツ鍋の味わいはといえば、普段に味わっている以上のほっかほっかの温かさでもてなしてくれたというべきであろう。生姜味のスープは身に染みていて、中華麺の追加注文をしてしまったのであり、そしていざ注文した中華麺はといえば、モツの出汁が出ていて特別なスープを基にして塩味のラーメンを提供してもらったということになるのであった。モツ鍋の〆は中華麺で決まりということである。

いろいろな鍋を食してきたが、「モツ鍋」の中華麺〆の味わいにおいては、ベスト3に入るものであったと記しておきたいのである。

酒呑みにも優しい大蒜(ニンニク)の効能

通風も鎮まった故に、またぞろ酒を嗜む日々が続いている。プリン体が少ない飲み物(ホッピー等)を注文するのは相変わらずだが、近頃気になっている肝臓病対応のために気にして摂っているのが大蒜(ニンニク)なり。

もともと炒め物、煮物、等々の香辛料として使用してきた食材ではある。疲労回復を齎す元気の元として注目される代物でもある。だがもっともっと積極的にニンニクを食していこうと自覚したのは、肝臓病予防の効果があるとされていることが大きい。アルコール等によって肝臓に負担をかけ続けているおいらにとっては、肝臓病をあらかじめ予防していくことは必須である。そんなことを近頃は自覚しつつのニンニク摂取なのである。

さて居酒屋でニンニクを注文しようとしたとき、真っ先にメニューを確認するのが「ニンニク揚げ」である。

球根部分の花茎とも呼ばれるものを丸ごと揚げたメニューである。シンプルでありながら、ニンニクの効用を享受できるので有り難い。

また、ニンニクの串焼きと云うメニューも注目度大である。

一房一房を串に指し、炭火でじっくりと焼き上げる。じわっとニンニクの実からエキスが漏れ出てくれたら食べ頃なり。食感も味わいも満足の逸品なのであります。

本来は「生揚げ」と呼びたい、某店自家製の「厚揚げ」なのだ

多摩地区にある某居酒屋では、「自家製厚揚げ」というメニューが人気だ。外はカリカリでいて中身はジューシーな絹漉し豆腐の温かく旨い食感が舌を刺激する。

厚揚げとはどこのスーパーにも置いてある日常的大衆メニューであり、取り立てて騒ぐこともないのは重々承知なのではある。だがしかし、この自家製厚揚げは特別なものなのだ。

おいらの出身地、群馬の田舎では、厚揚げのことを「生揚げ」と呼んでいる。生のままの絹漉し豆腐をそのまま油に潜らせる。10数分を経て揚がり上がったほくほくのものを、葱、生姜、鰹節をのせ醤油を掛けていただく。まさしくほっかほっかの豆腐の旨みに加えてカリカリとした殻の食感がたまらない旨さのハーモニーを醸し出すのである。

いつかおいらの家でもこのメニューを調理したいと願っているが、今の処はこれに敵うメニューを作り上げる自信などなくて、勉強学習に励んでいるところなのでありました。

弱いが旨い魚の見本、鰯の刺身を味わったのです

通風の発作が漸く収まったので、久々とばかりに居酒屋に来訪した。そして何時ものプリン体ゼロのホッピーを注文したのです。そして、つまみの第1番は、鰯の刺身なり。

魚編に弱いと書く魚などそうはいないはずだ。ニシン科のマイワシとウルメイワシが殆どをしめている。陸に揚げるとすぐに弱ってしまう魚であることから「いわし」と呼ばれることになったとされる。他の魚類の餌になることも多くあり、そういうことからも「弱い魚」という評価が覆ってしまったということなのだろう。

久しぶりに箸をつけた鰯の刺身は至極の美味であった。EPA、DHAといった血液さらさら成分が豊富にふくまれている青魚の代表でもあるのだから当然である。そして、そんな青魚の刺身をこれからもずっと食していきたいと願うのでありました。

これからの季節にこそ食べたい「しめ鯖」なのだ

日本の近海を行き交う回遊魚の旬の季節は過ぎて漁獲量も減ってしまったが、これからの冬の季節にこそ美味しいのが「しめ鯖」である。青魚の中では地味な種類とも云えようが、酢で締めたしめ鯖が重用されるのもこの時期ならではのものだ。

たっぷりと脂が乗った鯖は、この時期には主に九州沿岸で漁獲されている。それがしめ鯖として流通しているのだ。

鯖は昔から「生き腐れ」と云われるくらいに足が速い(腐敗しやすい)魚なので、酢で締めて日本全国に出荷されるのが一般的だ。生のままの刺身として提供できるのは、漁獲した当日でしかあり得ない。素人料理で作った鯖の刺身には要注意。特に加熱用の鯖を捌いて酢漬けにするなどはもってのほかである。

酢で締めた魚を特に「きずし」とも呼ぶが、きずしの中ではしめ鯖に敵う味は無いとされている。つまりはその特別な味わいを求めて、この冬の特別な時期には、しめ鯖が求められるという訳なのだ。

食したしめ鯖は、確かな仕事が施されている一品であった。酢のとがった酸味はほとんど無くて、青魚としての鯖の豊かな味わいが嬉しいくらいに口腔中に広がって来る。冬の味覚として特別なものだと云えるだろう。

見た目はいまいちだがいける10種類の「海鮮ばくだん」

まぐろ、サーモン、ホタテ、いくら、たらこ、とろろ芋、納豆、かいわれ、卵黄、刻み葱を合わせて、豪快にかき混ぜて食する。豊富な海鮮食材を使った料理なのだ。

海鮮ものにねばねば食材を混ぜて食べる「ばくだん」という料理はポピュラーになったが、これだけ種類豊富なものは珍しい。例えば「まぐろと納豆」というメニューをランチで注文するときなど別々に口に入れたほうが良いとしばしば思っていたのだ。けれども海鮮ものとねばねば食材は良く似合うということを実感した今、そんな思いは吹っ切れていた。夜には熱燗のつまみにして一杯。そしてその後は、御飯とセットで食したい一品なり。

生シラスを食して考える、海洋国家日本の行末について

某居酒屋にて生シラスを食する機会を持った。シラスとは魚の稚魚を指して云うが、流通されて食卓に上るのはほとんどが鰯の稚魚である。駿河湾や湘南地域ではよく採られるものであり、殊に江ノ島近辺では地域の名物料理として有名である。それらの地方に行った際には極力、地域のシラス料理を探して食している。おいらの大好きな食材の一つとなっている。

東京近辺の料理屋等では主に「釜茹で」として調理されたものが提供されている。それを乾燥されたものが「ちりめん」であり、保存食としてポピュラーなものとなっている。関東では「シラス干」とも呼ばれている。そして近頃はたまに「生シラス」も目に付くようになった。どれもが御飯と一緒に醤油などを垂らして頬張れば、得も云われぬ味わいなり候。

未発達の骨が丸ごと食べられ、カルシウムの補給にうってつけであるとされている。骨粗鬆症を患う母親には、ことある度にこのシラスを勧めたりもする。天然のカルシウムを摂取するにこれほど適したものはないと思われるからだ。

海洋資源が豊富だとされていた我が国ではあるが、そんなこんなは過去の記憶になりつつあるのだろう。網にかかった稚魚をこれでもかと漁するやり方は考え直さなくてはならないのではないか? 稚魚に関する新しい漁獲量等の取り決めが必要になってくるのではないか? これからはシラスに限らず、海洋からの恵みを乱獲などすることなしに、海洋の恵みに対して謙虚に接していくことが大切だと思われる。シラス、鰯、等々のポピュラーな魚たちに対して、感謝の意識を持ち続けることが、これからの日本の食生活にとって極めて大切なことなのだろうと考えたのでした。

武蔵小金井「百薬の長」のおでんでほっこり温まってきました

JR中央線「武蔵小金井」駅南口は再開発が進み、数年前の商店街がすっかり消え去ってしまった。代わりにコンクリートで打ち固められた広場、イトーヨーカ堂を始めとする巨大商業施設、等々が立ち並びかつての面影は無い。その点で北口には小さな商店街に人々が集まり、小都市ならではの賑わいがある。

北口を出て徒歩1分程度のところにある「百薬の長」は、駅近でありながら長い歴史を有する大衆居酒屋であり、おいらも過去にはよく通っていた。もつ焼きの種類が多く、メニューを見れば20種類もが表示されている。そんな新鮮なもつの味を求めてやってくる客が多いが、おでんや煮込みもまた侮れない。冬に温かいおでんを頬張ればお腹も心も温まり、居酒屋巡りの醍醐味を味わえるのだ。もつ焼きを6本とホッピーを2セット、そしておでんを2皿のお替り。おでんをお替りしたのは珍しいくらいだが、それだけ温まってきました。

「酒は百薬の長」という古えの言葉から取った店名はユニークだが、同店では焼酎3杯、日本酒5杯までと決められていて、それ以上はオーダーストップ。つまりは泥酔者は店に来るなという訳だ。それかあらぬか地元の常連客はよく喋りよく笑うが、大虎で暴れだす酔客などは見かけない。六本木より小金井で飲みたいと思うこの頃なのだ。

■もつ焼き百薬の長
東京都小金井市本町5-12-15

高田渡さんを思いつつ頬張る、吉祥寺「いせや」の焼き鳥

吉祥寺界隈を久々に逍遥散策した。JR吉祥寺駅の南口を降りて南に向かって暫らく歩くと、井の頭恩賜公園に突き当たる。公園の中には大きな池が陣取っている。池の周囲に散歩道があり、武蔵野界隈の市民の憩いの場所となっている。

かといっておいらは憩いを求めて散策したわけではなかった。この土地の人々の、熱っぽい営みに接したい、そしてまた、刺激的な出会いや発見を享受したいという、願いによるものだった。逍遥散策しているうちに行き着くのは「いせや」であった。云わずと知れた、吉祥寺の名物焼鳥店である。公園の行き帰りに通り過ぎるときの誘惑は甚大なものがあり、やはり吉祥寺を散策して「いせや」に立ち寄らないということは有り得ないのである。

吉祥寺に店を開いて80余年。今では吉祥寺市民の胃袋になくてはならない存在ともなったという、由緒正しき大衆居酒屋なのだ。これくらい地元市民に支持され愛されてきた居酒屋という存在を、この吉祥寺「いせや」の他に知ることはない。

音楽ファン、フォークファンであれば誰もが知っていることだが、ここ「いせや」の常連客として有名なのが高田渡さんである。おいらも何度かこの店でお会いして、世間話を交わしていた。そんなときの高田さんは、おいらにかぎらずとてもおおらかに対応していた。毎日のようにこの店に通っている高田さんを見るにつけ、おいらは何かしら、特別な目的意識を感じ取ってしまっていたのだ。すなわち、大衆酒場における芸術家による創作のネタ探しのようなものかと。おいらのようなルポライター稼業に勤しむ人間にとっては重要な行為であるから、つい余計な詮索をしてしまったようだ。

だが実際は、高田先生はといえば、今よりもずっと歩道にはみ出したその場所で、立ち飲みを楽しんでいらしたとのだろう。純粋に酒場で知人仲間と飲む酒、そんな時間が好きだったのだろう。下世話なるおいらの目論見が外れたということであり、高田渡さんの素晴らしさを益々再認識しているのであります。

■いせや総本店
営業時間: 12:00~22:00
電話: 0422-47-1008
定休日: 火曜日定休
住所: 東京都武蔵野市御殿山1-2-1

八王子の関根精肉店で「ホルモン鉄板焼」を味わう

その日に捌いた新鮮なホルモンを四角い鉄板の上で焼くというシンプルな料理。ホルモンの味の良さを素直に味わうにはもってこい。関根精肉店の看板メニューとなっている。

簡単な調理なのだが、同店ではテーブル上に置かれた鉄板セットの上で店員が調理してくれる。時間の配分やちょっとした手順の按配で左右されるものだから、お客は安心して調理の流れを眺めていくことができる。特にアルコールが入った客には有難い。

まずはモツの上に、ざっくりと大きくカットされたキャベツ、ニラ、ニンニクを鉄板に載せて焼いていく。キャベツからジワっと滲み出る水分だけで、他の食材が調理されていく。キャベツがしんなりした処で次の工程に。

大ぶりのモツの上にしんなりした4等分に分けたキャベツを重ねて、その上にニラ、ニンニクを重ね、蒸し焼きにしていく。下部には鉄板で焼き色が付き、上部はホクホクとした食感がそのまま活かされる。

キャベツが自然と崩れていくくらいのタイミングで、全体をほぐしていく。

大振りのモツを食べやすい大きさにカットし、調味料をかけて混ぜ合わせる。調味料は「醤油」「味噌」「塩」の3種類から選ぶ。この日は味噌味をチョイス。食材全体を混ぜて出来上がり。

身体が冷える鍋の季節だが、この店に来るときはモツ鍋よりこっちがどうしても食べたくなるのだ。ほかほか身体の中から温まるから、年中味わえるメニューである。ちなみにモツ鍋もメニューにあるので、いずれは同店のモツ鍋を味わってみたいものだ。

■関根精肉店
東京都八王子市横山町3-6 JEビル1F
TEL 042-656-1230

大塚「うな鐵」のうなぎ串焼きで精力補強なのだ

弟が経営する写真事務所のHP作りの打ち合わせを済ました後、豊島区大塚界隈を散策した。この辺りはおいらも以前事務所を構えていたことがあり、馴染みの土地だ。都電電車が駅を横切って走る風景は、独特の情緒を醸し出している。東京の山の手近くでありながら人の流れも静かであり、疲れた頭や身体を癒しに散策するには土地柄としてもってこいであった。

一巡して立ち寄ったのは、うなぎ料理の専門店「うな鉄」。うなぎの蒲焼き、白焼きはもちろんだが、串焼きが名物だ。まずはそのうなぎ串焼きコースを注文。よくある「きも焼き」の他、「ヒレ焼き」「バラ焼き」「レバ焼き」「串巻き」「短尺」「カブト」が、丁寧に炭焼きにして出される。うなぎの各部を食べ尽くせるコースであり、精が付くことこの上ない。中でもおいらの好みは「ヒレ焼き」である。うなぎのヒレとは数杯の背ビレの部分であり、これをニラで巻いて炭焼きにする。うなぎの凝縮された精力の元たる苦味が口腔内いっぱいに広がるのだ。思わず追加注文したしだいなり候。

以前はここ大塚にももう1軒、うなぎの串焼きを出す店があったのだが久々に通り掛かったその店は閉店していた。新宿思い出横丁の「カブト」、国立の「うなちゃん」等、こうした専門店はとても珍しく貴重なものとなってしまった。

■うな鐵大塚店
東京都豊島区北大塚2-12-2
TEL 03-3918-5700

冬の味覚「ぶり刺し」と「ぶり大根」

今年一番の寒波で12月並の寒さだという今日は、久しぶりにぶりが食べたくなった。ぶりとはスズキ目アジ科に分類され、青魚のファミリーでありながら青臭さが全くなくて、愛好者も多いと聞く。青々として鮮やかな紺碧の背中と腹とを分けるかのように、緑色したラインが目を引く。今からまさにぶりの季節なり。以前にも書いたが、出世魚のぶり(鰤)に脂が乗る冬の季節が食べごろである。

ぶり刺し
白く脂の乗った刺身の色が、この季節ならではである。築地の市場ではこれからの時期に取引が頻繁になる。大ぶりでありながらしっかりと味が乗ったぶりの姿は厳かにも見える。

ぶり大根
ぶりのアラを大根と一緒に煮込むという、素朴な煮込み料理。丁度この頃からのぶりは煮込み料理に適しているのみならず、その旨みを大根が吸収して得も云われぬコンビネーションを発揮する。普通は醤油味で煮込むが、薄味でありながらしっかりと色付いた大根の色味が旨いぶり大根のポイントだ。

馬肉を味わえる居酒屋「馬肉酒場 おや!馬っ鹿」

馬肉というものは中々目にし味わうことが少ないが、そんな馬肉を手軽に味わえる居酒屋を発見。「馬肉酒場 おや!馬っ鹿」では、馬肉の刺身(メニューには6種類ある)や鉄板焼、鍋物などの豊富なメニューが売りである。

赤身馬肉の刺身
馬肉といえば一般的に「刺身」で味わうものとされている。そんな要望に応えるメニューだ。新鮮な馬肉の赤身は柔らかく味わいも濃厚である。これぞ馬肉料理の基本なり。

くらしたの鉄板焼
マスターに「おすすめ料理は?」と聞いて返ってきたのがこのメニュー。「くらした」とは馬の肩ロースの部分を指しており、一番馬らしい部位であるということだ。味わってみれば確かに、馬本来の筋肉質のギュッと締まった肉質が充分に味わえる。

ホルモンの鉄板焼
こちらも馬の腸の部位であり、馬料理の本場信州では「おだぐり」と呼ばれている。これは信州の一部(全般ではない)では、郷土の定番料理ともされているらしい。

■馬肉酒場 おや!馬っ鹿
東京都八王子市東町1-7
℡ 042-643-1728

北海道の「秋鮭のちゃんちゃん焼き」と、九州の「筑前煮」

北海道の郷土食「ちゃんちゃん焼き」メニューを目にして注文した。だが期待を裏切ってホイール焼きで出されてきたのだ。本来は大量の鮭と、キャベツなどの大量の野菜類を鉄板上に投じて焼き込む料理だ。云わばこの季節の豊穣を祝う料理だったとされる。北海道一帯で食される郷土料理である。なのにこのちまちまして出された料理には、些かがっかりだったのであった。残念!

それとは裏腹に、元々は郷土色でありながらこの季節になると全国的に食されるのが、九州筑前地方が発祥の「筑前煮」だろう。鶏肉(モモ肉が相応しいとされる)をじっくり炒り込んでから、人参、牛蒡、蓮根、蒟蒻、椎茸、等々の季節野菜をたっぷり加えて煮込むというシンプルな料理だ。ちなみに上の写真はおいらが先日調理したものである。

今では日本の煮物料理の基本スタイルがこの調理法をベースにしていると云ってもいいほど、この調理法は定着している。そして誰でも真似が出来て、そう大きな外れが無いのも特徴的だ。

寒くなる秋の終わりから冬にかけては根菜類の収穫のピークだ。マクロビオティック料理の基本は、季節に収穫される食材を基本に調理すべしというものである。まさにこの基本に適った料理が「筑前煮」だと云ってよい。翻って、北海道の「ちゃんちゃん焼き」がいまひとつ我が国の定番料理とならないのは、冬の季節野菜を活かしきれていないということが大きな要因となっているとも云えるのである。

あまり見かけないが「白貝」に一目置くべし

市場では中々見かけないが、魚介専門店、北海道料理店などに行くと時々目にすることがあり、そんなときには注文したくなる。

「シロガイ」あるいは「サラガイ」とも呼ばれる。外見は文字通り白い色をしており、滑らかで、成長脈と云う筋模様が弱い。大きさは蛤くらいだが、形は青柳やムール貝に近い。生でも食することができるが、蛤のように炙ってバターと醤油を垂らして味わうのが正道だ。少々火を通した方が甘みもコクも拡がっていくようだ。

味は淡白でこれといった癖がない。ビールやホッピーのつまみとして充分だ。色々な貝料理にも使えるようで、検索すれば様々なレシピが見つかった。スーパーなどではなかなか出ないが、今度色々探してみたい食材ではある。

寒いこれからの季節こそ「おでん」なのだ

秋を一気に飛び越えて、北海道や東北地方は冬の装いなのだという。

そんな季節にはどうしても温かい食べ物が必要だ。その代表的な温かものといえば「おでん」なのであり、今日はそんな気分も際立って、おでんを食したのでした。

入ったのは「静岡おでん」の店。巨大なおでん鍋に、串を刺したおでんネタがグツグツと煮込まれている。おでんの汁が黒いのが静岡風なのだ。それを味噌ダレ付けで食べるのが静岡流ということだが、さすがにそれはパスして、和辛しを付けて味わった。これからもっとずっと食べたくなる味だろうな。

豊作の今年の「松茸土瓶蒸し」を喰らう

今年は国産松茸、中でも岩手産の松茸が豊作なのだという。例年に無く値段も下がっているという。価格が安い。まったくもって僥倖である。

そんなニュースを耳にして、松茸料理を注文することに決めていたのである。今年はすでに松茸料理は自家製料理の松茸御飯にて味わっているのだが、やはり今この季節の松茸料理を食したくなったのだ。

地元の料理店でも「松茸の土瓶蒸し」がメニューに出ていた。価格も手頃だ。材料は小ぶりの松茸に、海老、銀杏、鶏肉…。これらを専用の土瓶に入れて蒸し上げる。煮込んで松茸エキスを抽出した出汁をまず味わうのが、一般的な食し方とされている。出汁を飲んだら土瓶の蓋を開けてすだちを絞るというのも、当り前の作法とされる。高価な食材を扱うために、中々そんな壁を破るオリジナル料理に巡り合うことも無いようだ。

久しぶりに味わった「松茸土瓶蒸し」たが、食べた松茸の中身は甚だ少なくて豊作を実感することが無かった。料理店の食材として卸される松茸は、それほど安くはないということなのだろう。

ところで土瓶蒸しと云いながら、蒸すのではなく、器を火に乗せてグツグツ煮込むものも多い。地元料理店で提供されたのも同様である。目くじら立てるほどのものではないが、このいい加減なネーミングはどうなのだろう? やはり区別しておくべきなのではないだろうか…。