苫米地英人著「洗脳力」の主張は自己啓発書の類いを一掃するか

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我が国における脳機能科学の第一人者、苫米地英人氏により、本年2010年7月に発行された。帯には「本書の悪用を禁じます。」とある。オウム真理教信者への脱洗脳の活動家としても著名な著者が、ついにその洗脳方法のノウハウを明かすのか? といった興味で読み進めたが、そんな下世話な話題とは一線を画して論理は展開していく。

率直に云えば、書名や帯のキャッチコピーから想像する内容とは程遠いものがある。具体的な洗脳方法については、版権の問題も生じそうなので記すことを控えるが、扱っているのは6章のうちの最終章のみである。それまでの章にて、自分自身の心や夢をコントロールするための方法論が述べられていく。

現代世界を覆うグローバルスタンダードといった前提、価値観を根底から疑い、そこに分析のメスを入れようとする試みが行われている。キリスト教から仏教、禅宗、道教、等々の教えのコアを、苫米地氏ならではの統合化によって解き明かそうという試みが展開されていく。あるいは「アンカー」「トリガー」といった心理分析的概念による夢の実現法といった展開も進められていく。

我が国における多くのビジネス書、自己啓発書には見られない展開ではある。もとより自己啓発書の類いに大いなる侮蔑の視線を隠さない著者、苫米地氏だからこそできる主張に触れてみるのは悪くない。貴重な読書体験といえるだろう。

苫米地英人著「テレビは見てはいけない」

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昨年9月に初版発行されたphp新書の1冊である。タイトルに興味をそそられ立ち読みしているうちに、そのまま購入してしまった。

著者・苫米地英人と云えば、オウム真理教事件とのからみで何度かTVメディアにも登場していた人物である。「オウム信者に対する脱洗脳を手掛ける脳機能学者」という触れ込みで、ヒーロー扱いだったことを記憶している。当時から関心は深かったのだが、以来彼の著作に向き合う機会などなくここまで来たのだが、つい先日、偶然にもこの新書を手にしていたという訳である。

一読した印象で云えば、「これは自己PRの書なのだな」との一言。表題に掲げている大仰なテーマとは裏腹に、本文中には「サイゾー」「キーホールTV」といった著者が関係しているメディアの固有名詞がちりばめられている。おいらがここでそのような固有名詞を記すことこそ、PRに加担することになるので甚だ心痛いのである。最小限度の記述にとどめたつもりだ。

高邁なテーマを表題に掲げながら、卑近なPR活動に落とし込むといった姑息な目的が透けて見えている。