夏にかけてのこの季節に断然と口にしたくなるのがアスパラガスだ。この時期になると30センチ以上になったものが市場に出回る。一気に天を目指すように伸びる様は、強靭なる生命力のを示すかのようであり、ことにあの頭のイボイボ仕様の強烈なるイメージはその存在感を浮きたてている。
普通には茹でたものをマヨネーズ等をつけて食することにになるが、焼いたものも瑞々しいその生命力をストレートに享受できて嬉しい。行きつけの炭火焼の店にて、大降りの直径2センチものアスパラガスが数十本並んでいたのを目にして、迷うことなく注文した。
ピンと張った瑞々しい表面の繊維は炭火の効果でやんわりとしており、噛み切るのも容易である。生のアスパラガスを目の前にしてその違いに驚くが、熱にしおれるのではなく熱と調和するかのごとくやんわりとした姿は、見た目も充分にデリシャスである。ピンと張って瑞々しい食材が、熱という天然の外的要因によって新しい食物として成り立っていく様を、一連の工程の観察にて理解することができたのだ。
地中海原産のアスパラガスであり欧米食材としてポピュラーだが、実はこれが農家泣かせの、極めて難しい栽培によるものなのだ。すなわちこのアスパラガス栽培には数年を要し、収穫できる株に仕上げるまでに2~3年はかかる。根付きの良いアスパラガスの株を定植するにはそれなりの時間と労力を必要とするのであり、家庭菜園などを行なうアマチュア農家には、なかなか立ち入れない領域の食材なのである。
大きくて太ければ良いというものではない。30センチ、直径2センチ程度のものが最も味わいが良い。太過ぎれば空洞を生じて味を悪くする。今日食べたくらいのものがベターだと思われる。ラッキーであった。