核の時代のメッセージを込めた岡本太郎の「明日の神話」

今年は亡き岡本太郎さんの生誕100周年にあたるとして、幾つかの記念展が開催、企画されている。書店では「岡本太郎コーナー」が設けられ、どこも足を止めて画集や著作本を開く人々で賑わっている。

本日の今にして改めて思うに、岡本太郎という芸術家の存在はまさに「核の時代」と云うべき今日の姿をモチーフ、テーマにして、旺盛な制作活動にあたっていたのではないかということだ。

渋谷駅ターミナルの内部には「明日の神話」という巨大なる壁画が展示されている。否々、展示等という一時的なものではなくして恒久展示としてのその壁画は、公共施設の心臓部に存在している。この壱事実をもって、岡本太郎という存在の重さを感じ取ることは容易である。それに加えて公共アートというものに対しての逸早い取り組みを、太郎さんは日本の誰よりも先駆けて行なっていたということを感じ取るのである。

些か前書きが長くなってしまった。3/11の東日本大地震がきっかけとなって発生した、原子力発電所の爆破事故という重大な現実に遭遇して、岡本太郎さんのかつて発したメッセージが心に響いていたというわけなのだ。特に「明日の神話」に込められたものこそ、今の現代人が受け取るべき大切なものが込められていると考えている。

壁画の中央にはのたうちまくっている骸骨が、そのとき(核の時代)の尋常ならざる光景を如実に示している。そして、それこそは、今の現実に引き起こされている光景でもある。

人間が自然界の全てを支配しコントロールしようとしてきたその結果が、核兵器の存在や核施設の建設へと邁進へと繋がってきた。そして今まさに、その崩壊が引き起こされている。

今こそ「核開発」などという悪しき言葉に惑わされることの無い、人間としての日常を取り戻すべきときなのであると思うのである。

八王子市夢美術館の「夢美エンナーレ」鑑賞

八王子市の画廊散歩イベントでのスタンプラリーは、10軒の画廊を巡った後に、八王子市夢美術館でのゴールで締められる。同美術館でゴールのスタンプを押せば、通常300円かかる「夢美エンナーレ」への招待券が与えられるのだ。

この「夢美エンナーレ」という展示会は、今年で4回目となる恒例の公募展であり、八王子市に在住・在勤・在学していたり、あるいは過去に在学していた人を対象にした、市民参加の公募展という特徴がある。展示会開催中の会場入場者には投票用紙が配布され、来場者の投票によって、大賞他の13の受賞作品が決定される。「あなたの投票で大賞が決まる。」というのがキャッチフレーズとなっている。

「画廊散歩」のイベント参加者は、ベテラン、老練の作家が中心だが、この「夢美エンナーレ」のほうはと云えば、対照的に若手による作品が目に付いた。特に100号サイズ等の巨きなキャンバスに描かれた作品が中心であるため、何をおいても若いエネルギーに圧等されるのだ。

反面で、ちょいとした技法を加えることで完成度が高まったり、アピール度が上昇したりするはずの、云わば未熟な作品も多かった。おいらも会場にて配られた投票用紙に3点の作品の投票活動を行なったが、老練な作品よりも、未熟だが荒削りの作品を最後は選ぶこととした。受賞作品が決定したら、またそれらの作品とおいらの投票作品等についてもコメントしたいと考えている。

ともあれ、現在八王子市内では、アートのユニークなイベントが開催中である。「画廊散歩」とあわせてセットで鑑賞するのがお勧めである。

■八王子市夢美術館
東京都八王子市八日町8-1ビュータワー八王子2F
TEL 042-621-6777
http://www.yumebi.com/
夢美エンナーレ入選作品展
2/27~3/25

「第14回八王子画廊散歩」がスタート(初日篇)

昨日予告した「第14回八王子画廊散歩」がいよいよスタートしたのです。

午前10時を過ぎた頃に作品を搬入。初めて足を踏み入れたその画廊(昨日も書いたが「ギャラリー芙蓉」という八王子の老舗画廊だ)に入れば、外見からは想像以上に奥深い画廊の全貌を見て取ることが出来た。入口は小さいが中身は大きいという、云わば八王子の花街界隈に息づく間取りの妙が、此処にも活きているように感じられた。

元はと云えばこの場所は居酒屋であり、巨匠作家のアドバイスにより画廊が誕生したのだというエピソードを、なるほど現実的な事象として納得させたものである。

この1年間で参加する画廊が3つ増えたという。都下の中心都市とはいえ、10もの画廊が存在しているとは知らなかった。八王子という地場が、そのようなアートの発信地としての特別な場所を担っているのかもしれないが、定かではない。

本日初日の「第14回八王子画廊散歩」は、無事にスタートを切り、市内の10ヶ所の画廊を舞台にアート作品の展示を行なっている。昨日のコメントとダブルが、八王子方面に足を向けるようなことがありましたらば、ぜひどれかの画廊をのぞいてみてください。

「第14回八王子画廊散歩」が明日スタート、おいらも作品展示します

http://www.atorie248.com/garousanpo/

八王子市内には中小の画廊が散在しており、地元作家をはじめとして幅広いアーティストたちの作品発表の場所となっている。そんな市内の画廊関係者が中心となって「八王子画廊散歩」というイベントが催されている。

今年は明日(3月10日)から15日まで、10ヶ所のギャラリーを会場にて開催される。どの画廊も八王子駅から徒歩20分圏内にあり、散歩しながら美術作品に接するには丁度よい機会だ。

実はおいらもこのイベントに参加する。作品展示するのは「ギャラリー芙蓉」という、小さいが八王子市内では最も古参の画廊である。期間内に八王子近辺へと訪れる予定の人は、ぜひ足を運んでみてください。

■ギャラリー芙蓉
八王子市横山町18-19
Tel:042-623-9013

会期中にスタンプラリーが開催され、10ヶ所の画廊を回ってスタンプを押した人には、八王子市夢美術館にて開催中の「夢美エンナーレ入選作品展」招待券がプレゼントされるという。1日で全てを回るのはきついだろうが、近くにお住まいの人はチャレンジする価値もありそうだ。

http://www.yumebi.com/exb.html

映画版「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」

http://black-genkai.asmik-ace.co.jp/

先日取り上げた書籍のほうは、2ちゃんねるのそのままコピーで、ぐちゃぐちゃだったのに比べると、一編のドラマとして整理されている。登場人物のキャラクターも相当作り込まれた格闘の跡が見え隠れしており、製作者たちの気合がそこかしこに漂っている。

ただし、登場人物の何名かは極度なワンパターン演技が煩く興醒めだ。リーダー役の品川祐はその際たるもので、馬鹿の丸出しでしかない。やはり芸人演技の限界を思い知るのだ。

その逆に書籍では際立っていなかった田辺誠一演じる「藤田さん」のキャラが、やけに際立っている。映画版「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」の主人公は「藤田さん」であると云えるくらいだ。それに比べて小池鉄平の「マ男くん」はいまいち存在感が薄い。

そして映画の後味だが、やはり清々しくも感動的でもないものだった。「皆がいるから頑張れる」等といった台詞は気休めにもならないものであり、世の中の不条理を増長させるに過ぎないだろう。こんなブラック企業がはびこる現代社会こそ何とかしなくてはならないのだ。

国家警察権力の内ゲバ的抗争が際立った映画「相棒Ⅱ」

正月くらいは完全な休暇をと願いつつ、ふと出かけたのは近くの映画館。「相棒Ⅱ」を鑑賞したのです。県下一とも目されるショッピングモール内にあるそのスペース界隈は、旧市街地の落魄れた様相とは異にしており、至極活況を呈していたのだ。

http://www.aibou-movie.jp/

映画自体の感想を述べるならば、まずは「Ⅰ」に比較してスケールダウンが明らかだったということだ。映画の筋書きのおおよそは、ほとんどが「警察庁」と「警視庁」との内部抗争を基本にして創作(即ちフィクションとしての非現実性として)されている。反面では内部抗争をリアルに描いたことで、とても評価する向きが多いとも聞いている。

両者取り入れてここで評価するならば、結局のところ、「リアルではあるがスケール的にはみみっちい」ということになるのだろう。実際にそのような印象を、シーンの至るところに感じていたものなのである。「警察庁」と「警視庁」という構図は、ある種の緊張感漂う関係性でありながら、でも実際には大きな根っこを両有している親身な関係性であることは否定できない。

そんな曖昧模糊とした「警察庁」と「警視庁」との関係性を素材として、デモーニッシュに描き切った映画だということが云えよう。この立場でのスケール云々については緒論あるということなのだ。

花&フェノミナンはこれからもやってくれると確信した、クリスマスのライブ

天晴! やはり花ちゃんは凄かった。途轍もないエネルギーでライブ会場のメンバーを恍惚の渦に巻き込み魅了したのであった。昨日25日のクリスマスの夜に開催された「花&フェノミナン」ライブの夜に熱く燃えたライブは、今なおおいらの心に響いて消え去る気配もないくらいだ。

実はネット上には先日から、このライブが「花&フェノミナン」の最後のライブになるのではないかという情報がもたらされていたのだから、心安らかにはいられなかったのだ。

 どうもありがとうございました!
 花フェノは12月25日の
 ライブをもってしばらく
 活動を休止いたします。

というようなインフォメーションが「花&フェノミナン」の公式サイトに踊っていたのであり、もしやしてこれから「花&フェノミナン」の最後のライブ、歌声が聞けなるなるのかと、おいらは非常な失望感に捕らわれていたのだった。けれどもおいらが会場に居た花ちゃんに確認したところ、

「少し、少しだけ休みますよ。そしてまたやりますよ」

ということでありました。また先々活動を再開することを打ち明けてくれたので、少々安心もしていたのでしたのです。

この日のライブ会場は国立の「地球屋」。まず最初に「KORAKORA」のライブから始まり「THE FOOLS」へとバトンタッチ。そしてとりの「花&フェノミナン」へとバトンが渡るのに2時間以上の時間が経過しており、会場は前2ライブでの興奮でごった返していた。そしていざ鳳「花&フェノミナン」の登場と相成ったのです。

ファンならば皆知っている「君の月の部屋」からライブがスタート。

♪ 君の胸のぬくもりと 河の流れる音はおんなじだ
  国境をかけひきで 飛び越えるより
  あいしてる その一言で
  宇宙まで飛び越える 上も下もないところまで ♪

う~ん、響く! これ以上ないくらいに響き渡るリズムだ。そしてたしか、3曲目。「光の中へ」。これこそは至極名曲である。

♪ いくつもの 出逢いの旅の空
  すすけた顔で あなたと笑えば 道は転がっていく

  例えばそこが 世界のどんづまりでも

  目を開ければ そこには道があり
  ぼくらにはまだ行くところがある

  わずかなほんとうのことが この道には溢れてる
  風に吹かれた 唄うたいが 自由をまた唄にする ♪

次の道に踏み出すための一歩としての休養期間なのだろう。まだまだ彼らはやってくれると確信したのです。

村上春樹原作映画「ノルウェイの森」の限界〔1〕

村上春樹さんの原作、ベトナム系フランス人トラン・アン・ユン監督による映画「ノルウェイの森」を、遅ればせながら鑑賞した。単行本、文庫本を併せ総計1000万部以上を売り上げたヒット作が原作ということもあり、書店では毎日、同映画のPRビデオが流れている。懐かしいビートルズのメロディーがあれだけ流されていると、見ない訳には行かなくなってくるもんだ。仕方ない、見てみるか…。初めから過度な期待は持たずに府中の映画館へと向かった。

http://www.norway-mori.com/top.html

本編が流れて数分後に驚かされた。なんと糸井重里さんが大学教授役で出演し、ギリシャ悲劇についての講演を行なっているではないか。村上&糸井コンビで共著を持っている二人の仲だからこんな配役もあるかと、妙に納得させられる。村上ワールドの案内役として、うってつけの人選である。

スタッフカメラマン、マーク・リー・ビンビンによるカメラワークも悪くない。長回しシーンにも独特の揺れがある。常にカメラの視線が揺れている。決してうるさくも不安定さも感じさせることなく動いている。成程、村上ワールドの表現者としてのことだけはあるなと思う。監督とカメラマンとの良いコンビネーションだ。

だが直子役の菊地凛子ちゃんはちといただけない。元々村上春樹の大ファンでありオーディションでも積極的にアピールしたというのだが、彼女にこの役は不向きだろう。国際女優であり美人でもある。だがやはり、小説の世界の「直子」像を傷つけてしまっていると感じさせずにはおかないのだ。とても純な直子が病気を発症し、謂わば壊れていく様を表現できる資質を感じない。彼女を起用した必然性を感じ取ることが出来ないのだ。とはいえ仮に、井上真央、戸田恵梨香、新垣結衣、等々の人気女優が演じたところで、直子を演じ表現できるという保証など無いだろう。無いものねだりというものである。

もう一人の主役、松山ケンイチは、特段の美男子というではなく丸っこい顔立ちやら雰囲気に、春樹さんの面影があり、好意的に受け止めることが出来た。喋り方もこれならば、村上ワールドに登場する主役として異議は無い。

ところで主役二人の会話は、原作のそれとはだいぶ異なっている。春樹さんは映画制作に先立って、監督やプロデューサーに対して、「僕の台詞は映画向けじゃないから直したほうがいい」と語ったとされている。監督、プロデューサーへのプレッシャーを低減させようとする心遣いだったのかもしれない。細かい処ではあるが、「あれっ、こんな台詞があったっけな?」という違和感を持ってしまった。納得できないところも何箇所かあるので、これから原作を読み直して検証したいと思っているところなのだ。

森山大道「路上スナップのススメ」と銀座「RING CUBE」の写真展

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今年8月に出版された森山大道「路上スナップのススメ」を先日購入した。「砂町」「佃島」「銀座」「羽田」「国道」の5章からなり、写真と文章による所謂、大道ワールドへの案内本という印象だ。

タイトルからも判るように、主にカメラマニア、写真学生をターゲットに、撮影術の裏側にスポットが当てられている。大道本としては最新作であり、ここ数年間の大道氏の新作写真や彼の取り組みに接するというだけでも一読の価値がある。仲本剛氏との共著となっているのは、仲本氏が大道氏の撮影に密着し、インタビューを交えて構成されたレポートという形を取っているからである。

写真家として活動を続けて半世紀あまり、ずっと気になる存在でありつつける大道氏。彼と併走するようにして仲本氏はスナップ術を記録し続ける。

「中途半端なコンセプトは捨てて、とにかく撮れ!」

だとか、

「写真に限らず、価値基準みたいな感覚が僕はとても希薄だから、一般的な基準や常識なんて、どうでもいいと思ってるんだよ」

だとかの、所謂「森山大道的語彙」は未だ健在であり、刺激的に心を突き刺してくる。

「路上スナップのススメ」では、デジタルカメラによる作品が目を引く。2008年頃からRICOH製のコンパクト・デジタルカメラを手に撮影された写真群が、同書の半分近くの分量を占めている。

おいらがこの写真群を初めて目にしたのは、2009年春頃に開催された写真展である。銀座の「RING CUBE」ギャラリーにて、「森山大道展 銀座/デジタル」と銘打った、撮り下ろし写真展が開催されていた。それは大道氏による初めてのデジタル写真の発表会でもあった。

銀座4丁目に聳えるギャラリーの作品群には、彼自身の影がそこかしこに見え隠れしていた。あたかもナルシスが鏡に映る自分の分身を愛したごとき光景を彷彿とさせている。散歩する大道氏と彼を追う写真家森山大道との隠れん坊みたいな、シチュエーションであった。

芸術家がナルシシズム的な資質を持つ例は珍しくないが、大道氏に至ってはあの年頃になって、童心に返って、銀座で鬼ごっこやら隠れん坊をしている姿が、とても微笑ましく目に焼き付いてしまったわけなのだ。

広角系レンズ描写が評判のRICOHデジタルだが、実際に撮影してみるとISO高感度設定下でのゴースト、ジャギー等の発生が目立つのが気になっていた。大道氏の作品群も例外ではなくそんなこんなが目立っていたが、そこはさすがに世界の森山大道。大道マジックとでもいうのだろうか、特異な表現効果をあげていた。それは特異な表現論を想起させるくらいの、インパクトを与えるに充分なものだ。

ミラーに映った大道氏の影絵、それはまるでナルシスが湖面に映った自身の姿に恋をしたまさしくその瞬間を写し取った、現代の影絵なのだと信じて疑わなかった。銀座という特異な場所で、探求するというより隠れん坊、鬼ごっこを繰り返す大道童。古希を越えてなお旺盛な彼は、来年4月にはデジタル写真のみの写真集「東京」(仮題)を発表する予定だという。これもまた待ち遠しい。

北千住立ち飲み居酒屋「虎や」の「ハッピー★ホッピー」リカさんのクリスマスソングに天晴!

昨日は久々に訪れた北千住の街の居酒屋「虎や」にて、「ハッピー★ホッピー」リカさんのライブが開催されていたので行ってきたのでした。

「ハッピー★ホッピー」を結成する前にはジャズシンガーとして活躍していたリカさんの、取って置きのナンバーを心いくまでに堪能することが出来た、近頃には無かった体験なのでありました。おいらはクリスマスソングとやらには不案内であるが、ジャズやブルースのクリスマスソングの古典的楽曲を高らかに歌い上げていたリカさんには、天晴の一言であった。お陰で一足早いクリスマス気分を味わうことが出来たのでありました。

ライブの途中から合流した「ハッピー★ホッピー」あきひさ氏も、最終ステージではライブに飛び入り参加していて、アンコール曲は「ハッピー★ホッピー」のオリジナル曲となったのでした。やはり〆の曲はこれに限るなと思った。

北千住の「虎や」という店舗は、北千住駅西口を左手に降りて行くと、居酒屋が割拠する地域へ出食わすのだが、北千住の「虎や」という店舗は、そんな地域の居酒屋割拠ルートを少し歩いて辿り着く。お勧めメニューなどをHPにて配信しており、地元の飲兵衛たちの拠点でもあるようなのだ。この日はおでんの盛り合わせなどを頬張りながらライブに参加していた。とてもグッドな体験であった。

おいらの住居からはかなり遠いのだが、たまには訪れて一献傾けたいという居酒屋なのであったのです。ちなみにフォークの評論家として名声を博しているなぎら健壱さんもこの虎やの常連客なのだという。

■虎や (とらや)
TEL 03-3870-7998
東京都足立区千住1-39-8 トキワビル 1F

死者を食って生きる魍魎たちの生態

政界ではまたぞろ魑魅魍魎たちが、怪しい動きをおっ始めたようだ。ところで「魑魅」や「魍魎」と云えば今では絶滅間近ともいわれる妖怪の一種である。妖怪研究の第一人者、水木しげるさんによれば、魍魎とは木石の怪とも云われその特徴として、死者を食べる性癖があると教授している。以下に「妖怪画談」から引用してみよう。

(以下引用)-----------
昔から墓地のあたりに住み、葬式のときには棺桶から死者を引きずり出して食べることもあった。
また、昔は土葬であったから、墓を掘り返して死体をむさぼり食うということは“魍魎”にとっては容易なことであった。
しかし、“魍魎”は虎を恐れるので、墓の上に虎の像と柏の枝を置いておくと、“魍魎”除けになったという。
(引用終了)-----------

特異な性癖ではあるが、成程、その世界に死者が多いというのも納得なり。金庫番や元側近という多くの人間たちが不審の死を遂げている。死者が眠るところにこそ魍魎が群がるということなのだろう。

吉原かおりさんの「カプセルアパート」展に見る今時の居住事情

新宿の「Place M」ギャラリーでは、吉原かおりさんの「カプセルアパート」写真展が開催されている。


http://m2.placem.com/schedule/2010/20101210/101210.php

「カプセルアパート」とは、カプセルホテルのスペースを少し広くしたような1.5畳ぐらいの場所で、そこを居住用として借りるのだという。ネットカフェを渡り歩くよりも安定した生活が送れそうだ。

写真家の吉原さんは神戸から上京し、7年ほど前にカプセルアパートに住み着くようになった。それ以来居住者たちを撮影してきた作品群の、数十点が展示されている。海外からの旅行者、会社員、フリーター、等々、職種も人種も性別もまちまちだ。居住者のプライベート空間でもあるその場所を写真に収めつつ、人間とは何か、自分とは何かと、無意識に問い続けていたという。2007年に東京、大阪のニコンサロンで展示され評判を呼んでいたが、今年11月に同名の写真集の発行を機に、写真展も企画された模様。写真集に掲載された写真は、高級機八ッセルブラッドで撮影された「6×6」版の作品だが、それらのシリーズとは別に、通常の35ミリサイズの写真が展示されている。

「ずいぶん若い子が住んでいるんですね?」

案内してくれた吉原さんにそう尋ねると、

「これ、私なんです。7年前の…」

と、笑って答えた。作者の吉原さんは現在30歳で、とても大人びて見えていたので、本人であるとは気付かなかったのだ。所謂セルフポートレイトである。自らがモデルとなりセルフタイマー機能で撮影したという。まだ幼さを感じる23歳の女性が、時に澄ましたりおどけたりして狭いカプセルの中でポーズを取っていた。作家自身の過去をこのように記録して残したことは、とても貴重な行為である。少しの衒いもなくこんな作品発表が出来る吉原さんに脱帽だ。

沖縄や中国北京などで、このようなカプセルアパートが生まれたとニュースになったが、東京の中心部にもこのようなアパートは存在している。今はまだ限定的なスポットだが、これからネットカフェに続く居住空間として注目されていくのではないかと思う。

■吉原かおり写真展「カプセルアパート」
2010年12月10日~12月16日
場所:Place M
東京都新宿区新宿1-2-11 近代ビル2F
TEL 03-3341-6107

今年の流行語年間大賞に「ゲゲゲの~」が決定

ユーキャンが主催する2010年度の「新語・流行語大賞」の年間大賞に「ゲゲゲの~」が決定したというニュースが飛び込んできた。今年もっとも流行し印象に刻まれた言葉としての認定である。水木しげるさんの妻、武良布枝さんが著わした「ゲゲゲの女房」を基にしたドラマが大ヒットしたという背景を受けての受賞である。水木しげるブームは想像以上に広く浸透していたということが証明された格好となった。授賞式には水木さんの妻で「ゲゲゲの女房」の作者でもある武良布枝さんが出席し、受賞のトロフィーを受け取った。水木しげるファンの一人としてこの決定を喜びたい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101201-00000519-sanspo-ent

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武良布枝さんが2008年に発表してヒットした「ゲゲゲの女房」は、今年になって、NHKのTVドラマ化されて国民的な関心を集めた。さらに映画化もされており(12/より全国公開予定)、今やブームの頂点を極めているといった感もある。

著書には、水木さんとのお見合いの馴れ初めからはじまり、赤貧の時代を生き抜きそして作品がヒットして一躍時代のスポットを浴び、家庭では二女の母として苦労しながら逞しく生き抜いている、そんな一人の女性としての、飾ることの無い言葉が綴られている。極めて感動的なエッセイとなっている。

受賞語として「ゲゲゲの女房」ではなく「ゲゲゲの~」とされたのは、このブームには、夫である水木しげるさんの存在の大きさを認めてのことであろう。偉大な夫あってこその妻の栄光か?

先日のエントリー記事でも記したが、水木さんの出世作「ゲゲゲの鬼太郎」は、元は「墓場の鬼太郎」という題名で発表されていた。講談社の漫画賞を受賞してTVドラマ化が検討されていたときにネックとなっていたのが、著作権の問題だったとされている。「墓場の鬼太郎」でのドラマ化が困難であったことをうかがわせる。

「ゲゲゲの~」というネーミングは様々な意味が含まれているが、水木しげるさんが語ったという説明がもっとも分かりやすい。水木さんは自分の「しげる」という名前をうまく発音できずに「げげる」となってしまう。だから「ゲゲゲ」で良いんだと語った逸話を、「ゲゲゲの女房」の本の中で披露している。ゲゲゲのプロデューサーとしての肩書きを持つ夫人ならではの、重い告白であると云えるかも知れない。

エッセイ本の中では、二人が見合いをした後4日で結婚したという、超スピード婚となった舞台裏を公開している。そんなエピソードの数々は、我々の世代とのギャップを浮かび上がらせもする。当時は自由恋愛の結婚などは珍しく、見合い結婚以外の道は無かった、お見合いで結婚相手を決めるのが運命だった、等々の心情を淡々と綴っているくだりはとても印象的だ。

世界の妖怪像を網羅した、水木しげる著「妖怪画談」

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妖怪研究の第一人者こと水木さんがしたためた、一目でわかる画像がふんだんに掲載された入門書である。「水木しげるの世界展」にはその一部が展示されているが、じっくり妖怪世界に浸りたいと、この一冊を購入した。

東北岩手のおしらさま、座敷童子、河童といった妖怪は全国に知られているが、妖怪はそれらばかりでなく、至るところに生息し伝承されている。水木さんは妖怪研究の為に、日本国内のみならず海外へと足を伸ばして、その生態を追究している。戦時中に訪れたパプアニューギニアをはじめ、アフリカ、メキシコ、ペルー、いずれも地域に存在する「霊霊(かみがみ)」の実在を確認している。ニューギニアの「森の霊」を描いたページは、現地の人たちの生活が霊の存在とともにあることを、強烈なイメージとして明らかにしているようだ。

「霊」の字を二つ書いて「霊霊(かみがみ)」と読むのだが、これは実に面白いと書いている。「本来、神様も妖怪も幽霊さんも同じ所の御出身なのだ。」と高察する。

妖精に会いにアイルランドへ行ったり、インディアンの精霊を見に現地へ直行したりと、世界を股にかけている。そんな熱意は、「目に見えない世界」をどのような形にしたのか? という興味からもたらされているという。

子泣きじじい、一反木綿、ぬりかべなど「ゲゲゲの鬼太郎」の登場人物の多くは、民間伝承によって伝えられる妖怪たちの姿が原型になっている。だがこれだけ鮮明な形でキャラクター化されたのは、水木さんの想像力に依っている訳である。主人公の「鬼太郎」はといえば完全なオリジナルであり、その出自等は「墓場の鬼太郎」シリーズによって示されている。「ガロ」「少年マガジン」では「墓場の鬼太郎」として登場していたのだが、テレビアニメ化に伴って現在の「ゲゲゲの鬼太郎」に改題された。どちらがよいということではないが、雑誌時代の「墓場の鬼太郎」は、妖怪たちとの交流の様子がより濃密に描かれている。

「水木しげるの世界展」が八王子市夢美術館にて開催中

昨日(11/26)より八王子市夢美術館では「水木しげるの世界 ゲゲゲの展覧会」が開催されている。ご存知水木しげるさんは「ゲゲゲの鬼太郎」の作者として知られ、近年は「ゲゲゲの女房」という夫人の本がヒット。TVドラマ化、映画化もされるなど、水木ブームが沸き起こっている感さえある。そんな米寿を迎えた彼の、原作品展示はもちろん、伝説的な漫画雑誌「ガロ」における活躍にもスポットが当てられ、見応えは充分だ。

原作品展示の中でも特に、妖怪研究家としての仕事ぶりは、その質量共に充実を極めており、水木的妖怪道の深奥へと連れ込まれてしまうこと必至なり。歌川広重の「東海道五十三次」をもじった「妖怪道五十三次」のシリーズには、思わず知らずに笑みがこぼれてしまい、東海道ならず妖怪道を旅してみたいという誘惑に捕らわれてしまったのだ。

漫画家としての才能の他に、極めて徹底した妖怪達への偏執的執着性に圧倒させられるのだ。つまりは妖怪研究あっての水木先生なのである。「卵が先か鶏が先か」的なるパラドックス、そんな二律背反の世界を妖怪世界の果てまでに追いかけて追求している。その姿勢に脱帽なのである。

なんと「世界妖怪協会会長」までなさっているというくらいにその学問追求の姿勢は徹底しているのだ。水木さんの弟子には、荒俣宏、京極夏彦という著名な作家の名前が挙げられる。ちなみに、漫画家としての弟子には、つげ義春さんを始め池上遼一等々の大御所が名前を連ねている。晩年においてもこれだけ慕われるアーティストはあまり見かけない。天才は夭折するだけが運命と決められている訳ではないことを、この展覧会にて納得させられたのでありました。

■水木しげるの世界 ゲゲゲの展覧会
会期:2010.11.26(金)~ 2011.01.23(日)月曜休館
観覧料:一般500円、学生、65歳以上は250円
場所:八王子市夢美術館
〒192-0071東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
TEL 042-621-6777 FAX 042-621-6776

アートイベント「COLORS」の取材で代官山ヒルサイドフォーラムに出没

例年この時期になると代官山のヒルサイドテラスで開催される「COLORS」というアートイベントがある。今年もまた取材を敢行したのです。美大の芸術祭、先週のデザインフェスタ等と比べると賑やかさには欠けるが、若いアーティストたちの意欲的な作品が目に付き、会場には若い才能が開花していた。東京を中心とする圏域ばかりではなく、地方かきらの出品者が目立っているのも特徴的だ。

参加者の中には雑誌メディア等にて作品発表を行なっている人が少なくないが、媒体ニーズによる依頼作品とは別に、こうした展示会での作品発表に力を入れている様子が伺われる。

作家にとってこうしたグループ展活動は、多勢の観客に直接接して、感想や反応に接することができるなど、メリットも大きいのだ。

福井県から上京していたyouさんは、女性をテーマに、コンピュータによる作品、所謂CGによるイラスト作品を展示している。「Illustrator」ソフトを充分に使いこなし、独特なインパクトのある線の描出等、素晴らしい持ち味を感じさせている。自身の作品をアクティブにPRする様も天晴れであった。

■COLORS
2010年11月9日~11月14日
代官山ヒルサイドフォーラム
http://www.hillsideterrace.com

豊穣な手づくりグッズの祭典「デザインフェスタ」に潜入

先日も触れたが、11/6,7日と「DESIGN FESTA VOL.32」が東京ビッグサイトにて開催されていた。巨大なビッグサイトの「West Halls」を占領して催される当フェスタは、この時期とても気になるイベントで、ここ数年来時々足を運んで注目。今回も取材を敢行したのだ。


「オリジナル作品であれば、どんな方でもご出展頂けます。」という主催者側のアナウンスもあり、全国からデザイン、アートの関係者が集っている。気軽に参加できるアートイベントでありながら、これだけの影響力を行使できるのだから、主催者側は笑いが止まらないものと思われる。

足を運んでいつも目に付くのが、手づくりグッズの豊富な作品群。アクセサリー、ファッション、ブックカバー、玩具、ぬいぐるみ、等々の、様々な豊穣なる手づくりグッズの見本市とも云えるくらいに、手にして接することができる。工場で大量生産される代物とは異なり、思い込みが篭ったものたちばかりである。

「多摩美術大学芸術祭」を訪問して記しておきたいこと

毎年この時期になると恒例の、多摩美術大学芸術祭を2年ぶりに訪問したのです。

http://www.tau-geisai.com/

我が国の「画壇」等とも呼ばれ老害が蔓延る美術業界には、些かの興味関心も持たないおいらであるが、このような美大生の作品発表展示会にはついついと足を運びたくなる。

アートは創造の印であり、日々の日常的に接しているべきものである。絵画を描いたり、工芸作品を造ったりという行為は極めて日常的な営為であるのであり、誰もに開かれているべきなのだ。

所謂「自己テキストの時代」における「自己表出」は、身近な場所にこそ存在している。これから先も「デザインフェスタ(11/6,7 東京ビックサイト)」や「アートムーチョ(11/13,14 八王子北口西放射線ユーロード)」等々のアートイベントが予定されており楽しみだ。

FUNKEY MONKEY BABYSのDJケミカルの位相はとてもユニークだ

昨日に続いてFUNKEY MONKEY BABYSの話題。時折しも昨日から「八王子祭り」が開催中であり、彼らがつくった「ぼくらの八王子」なる歌が、地元の少年少女たちに披露されている。今や彼らは松任谷由実、北島三郎に続く八王子の有名人の座を射止めたと云っても良い。町中挙げてのファンモンブームには些か驚かされるが、何しろ嫌味がない彼らを悪く非難しようとする地元民は見ることも出来ない。いずれ地元のヒーローとして「観光大使」以上の座を確保することになるのだろう。

ところでそんな「FUNKEY MONKEY BABYS」のメンバー「DJケミカル」はとてもユニークである。その役割、立場、あるいは吉本隆明さん流に云えばその「位相」こそは、大変にユニークであり天晴れなのだ。

まず目に付くのが、「DJケミカル」というニックネームに反してDJをしないということ。決してDJが出来ないわけではなくしないのだという。結構DJの腕前は確かなのだが夢中になると顔が怖くなるのでさせないようにしているなどと、まことしやかな噂まで流れているくらいなのである。

メンバーの後ろに居て彼が行なっていることといえば、変てこりんで下手糞な踊りである。風貌も猿とガキンチョを足して割ったようなものがある。だが決して居ても居なくても同じというものではない。下手糞な振る舞いをすることが観衆を引きつけ、視線を彼らに向かわせてしまう。他のメンバー(ファンキー加藤、モン吉)というのはいかにも普通で、しかも好青年で、ケチの付けようがないようなキャラクターであり、対照的な「変な」「キモい」キャラクターとの相乗効果を生んでいる。

FUNKY MONKEY BABYSが大好きな「THE Shalimar」の本格カレー

今年の甲子園高校野球の公式ソングとなったのが、FUNKY MONKEY BABYSの歌う「あとひとつ」である。メンバーの3人が八王子出身であり、八王子の観光大使を勤めていることでも有名となった。HIPHOPグループを名乗っているようだが、HIPHOPと云うよりは、今風の歌謡曲、応援歌と云ったほうがピンと来る。おいらは彼らの持ち歌にそんなに好きな曲は無いが、かといって嫌いでもない。若い世代が元気や勇気を感じ取れるような、嫌味の無い楽曲が受けているのも納得。

彼らがメジャーデビューする前から通っていて大好きだというのが、「THE Shalimar」というカレー店。インド人が調理も経営もする。味も本格派であることは間違いが無い。特に「ファンモン(FUNKY MONKEY BABYSの略称)」が大好きだというカレーメニューを一つにしたのが「ファンモンカレー」だ。チキンベースの本格カレールウに、茄子、オクラ、パプリカ、ブロッコリー等の夏野菜が載っている。まさに夏向けのカレーであり、マイルドな味わいが日本人にも違和感が無い。これにナン、ライス、サラダ、チャイが付いたセットで1,000円なり。

駅から少しばかり外れた場所にあるので、それほど賑わっているとは云えかねるが、味もナイスなこの店のメニューはお勧めである。

■THE Shalimar
八王子市寺町49-4山下ビル 1F
TEL 042-626-1341