横浜美術館で奈良美智の「君や僕にとょっと似ている」展が開催

横浜美術館にて開催されている「君や僕にとょっと似ている」展を鑑賞した。

http://www.nara2012-13.org/exhibition/

現代美術家奈良美智氏の、大小あわせて109点もの作品が展示されるという、個展という域を超えている展覧会となっている。

訪れてみてその作品群のとても大量な量に圧倒されていた。展示作品のすべてが11、12年の2年間にて制作されているのであり、とりわけ今年こと2012年作品が圧倒的な存在感を示している。

顔や瞳が大きな独特の少女像が、何点も重ねてイメージされており、観客(オーディエンス)に対する浸透力は絶大なものがある。自分自身や近くの友人等々に重ね合わせて「どこか似ている」感が感染していく。その感染力は只者ではないと感じさせるのだ。

「酒にまじわれば」(なぎら健壱著)でも特記されていた高田渡先生の存在感

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東北旅行に旅立っていた途中に買い求めた一冊がこの「酒にまじわれば」(なぎら健壱著)であった。予想していたとおりに丁度軽いノリの彼是に、旅の途中の暇潰し的時間的利用術としてはもってこいではあった。

酒にまじわってしまった人々の滑稽なる仕草やエピソードを、色々な人間観察的視点で描いている。だが実際には酒にまじわった人々をそのままに著すのではなくて、可也の脚色を施していることが、その鮮やかなる落ちの切れ味にて見て取れる。事実的にはこれは、なぎら的お馬鹿な呑兵衛達への仲間意識から記された一冊ではある。

脚色によって面白可笑しく記されていた呑兵衛たちの姿であるが、同著の後半に或る一章にては、なぎら氏にとっての師匠でありおいらにとっての師匠でもある高田渡先生のエピソードが記されていた。同著の中での呑兵衛達は、某氏等の匿名的記述に満ちていて、其れこそが脚色的背景を明らかにしているのだが、こと高田渡さんの節こと「忘却とは……」においては、特記的に実名で記されていた。曰く…、渡さんは時として、朝7時ごろに酔っぱらってフォーク仲間に電話をかけることが良くあったという。機嫌が良い日は喋り続けて、そのうちに眠ってしまったという。電話の相手は「渡さん、渡さん」と呼びかけるのだが、返事はない。やっと声が返ってきてほっとしたところで、渡さんの一言があったと云う。

「え~っと、私は一体誰に電話をしているんでしょうか?」

なぎら氏は同節を「なんという、正しい呑兵衛の姿であろうか。」と〆ている。まさしく高田先生の存在感が際立っている、微笑ましいエピソードではある。

いわさきちひろ美術館を訪問。ちひろさんの稀有なる作品世界や優しさに魅了されていた

本日は、都内杉並区内のいわさきちひろさんの「ちひろ美術館」を久しぶりに訪問していた。そしてその稀有なる作品世界や優しさに魅了されていたのであった。

絵本の挿絵を描く作家としてのちひろさんには、かねてよりのファンであり、水彩画の技法を活かして描くその手技やら、作品的構図の粋な造形などには、ファンとしてのレベルを超えて尊敬していたのである。そして本日はまたちひろさんの原画に接して尚いっそうの、尊敬の思いを濃くしつつある。

水彩画の技法を充分に活用した独特なタッチの作品世界は、彼女の手技的能力の凄さを表しており、それだけではなくして、彼女の思潮的、思念的世界には更に思いを深くしていたのだ。

今回の展示では、ドキュメンタリー映画「いわさきちひろ ~27歳の旅立ち~」の関連展示ということであり、ちひろさんの知られざる壮絶な人生の生き様にスポットが当てられていた。27歳にて故郷や過去の諸々を捨て去って、夢に生きたという彼女の特異なる人生を、生身の作品世界と共に公開している。

おいらは其の映画は未だ観ていないのであるが、ちひろさんの生涯についてはある程度の知識や理解を持っていた。27歳と云う若くは無い年齢の時期にて、愛と夢とを求めて旅立った彼女の人生に対しても、今更ながらに天晴と感じているのである。

■ちひろ美術館
177-0042 東京都練馬区下石神井4-7-2
TEL:03-3995-0612

高崎市美術館にて「ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展」開催

戦後のグラフィックデザイナーとして活躍した福田繁雄さんの大回顧展「ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展」が、群馬県高崎市の高崎市美術館にて開催されている。

■ユーモアのすすめ 福田繁雄大回顧展
〒370-0849 群馬県高崎市八島町110番地27
高崎市美術館
電話027-324-6125
http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/art_museum/art/fukuda_shigeo.htm

個人的なことではあるが、おいらは学生時代に福田繁雄さんの事務所でアルバイトを行った経験があり、福田繁雄さんの仕事に関してはそれ以後も常に注目をしていた。ひょうひょうとした福田繁雄さんの風貌や声と共に、若き頃の記憶として鮮やかに蘇ってくる。改めて大回顧展の作品を目にしつつ振り返れば、どこかしこに福田繁雄さん自身が作品中に登場していることが印象的である。

八王子市夢美術館にて「加藤久仁生展」を鑑賞

八王子市夢美術館
〒192-0071東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
Tel. 042-621-6777 / Fax. 042-621-6776
2012年2月10日(金)~3月25日(日)

http://www.robot.co.jp/article/?id=kunio

先週の「八王子画廊散歩」のスタンプラリーで入手した入場券を使って、八王子市夢美術館の「加藤久仁生展」を鑑賞した。「加藤久仁生」という名前には聴き覚えが無かったので、まったくの白い、何の先入観も無い気持ちで鑑賞に臨めたのが幸いであった。ポスターを見る限りではそのタブローとしての作品に迫力は無かった。それがタブローと云うものとはまったく別なカテゴリーの代物であると云うことを知ったのは、会場に足を運んでいたその場所その時であった。

アニメーション作家として、国際的な賞を受賞した加藤久仁生氏の、構想段階のスケッチから、絵コンテ、アニメの原画、更には同名の絵本の原画作品等々が展示されており、充分に加藤久仁生の世界を堪能できたのである。

フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭でアヌシー・クリスタル賞、米国アカデミー賞短編アニメーション賞、等の国際的な賞を獲得した「つみきのいえ」というアニメ作品は、海面が上昇したことで水没しつつある街に一人残り日々の生活を送りながら、毎日新しい積み木を積み重ねる老人が主人公の短編作品である。台詞は無く、近藤研二氏の音楽とのコラボレーションが絶妙のコンビネーションだ。鉛筆画をもとにパソコンで着彩されたというその作品世界は、控えめで擦れる様な加藤久仁生氏の息遣いを伝えている。アニメ作品の新しくもありベーシックでもあるスタイルが其処にはあった。

人生を旅した高田渡さんの「高田渡、旅の記録」

高田渡さんが没後にリリースされた「高田渡、旅の記録」と云うCDを、某リサイクルショップにて入手した。2枚組みのCDに43作品が収録されている。うちの10作品が「トーク」であり、渡さんならではの軽妙な喋りが収録されていて面白いこと極まれる。かつて何度か接したライブ会場でのトークに聞き入ってしまったときのことを想い出して止まないのである。

高田渡さんの人生はまさに「旅」と呼ぶに相応しいものであった。「演奏旅行」と称して全国各地を巡り各駅停車の旅をし続けていたのだった。かつておいらが写真展を行なうときに高田さんに挨拶に出掛けたのだが、「僕はいつも旅をしているので、写真展には顔を出せないと思います」と、ある種の素っ気無い反応を示されたことを、昨日のことのように想い起こしている。人生とは旅の如く。そして彼の旅とはまた、歩き続ける創作の日常的な生業其のものであったのであろう。

お酒が無くては生きられないくらいに耽溺していた渡さんの日常は、恐らく寿命を縮めてしまったことであろうが、酒と旅とそして人生を謳歌した高田渡さんに、あらためて「あっ晴れ!」なのである。

第15回「八王子画廊散歩」が本日スタート

昨日も予告したが、第15回「八王子画廊散歩」が本日(3月8日)スタートした。

http://www.atorie248.com/garousanpo/

おいらが作品展示している「ギャラリーヤスタケ」は、恐らく駅から最も遠い場所にあるが、それでも初日は訪問者がとぎれることがほとんど無いくらいに賑わっていた。

午後2時半からはおいらも画廊当番と云うことで、受付場所近辺での来廊者のお相手をしていたのだった。

受付業務と云う職種にはこれまでほとんど縁の無かったおいらは多少は緊張しており、その時間を過ごすこととなっていた。来廊者のほとんどはと云えば、八王子市内の住民、イベント参加者ではあったが、遠く市外からも友人の渡辺さんが駆けつけてくれて、ほっと一息の愉しい時間を過ごさせてもらっていたのだった。

■ギャラリーヤスタケ
東京都八王子市八幡町12-11
042-626-8114

今回おいらが出展したのは「夜の町並み」「月の居る風景」の2点。昨年の「バタフライ」のシリーズからは相当にイメージを異にしてのぞんでいた。丁度去年の同イベントが終了した頃から描き続けてきた。墨とアクリル絵の具を基本素材にして描いた連作のシリーズの2点である。

イベント終了の時間の前から、参加者によるパーティーが行なわれ、おいらは画廊が終了してから遅れてパーティーに参加することとなった。食べ物も飲み物もほとんど尽くされていた後だった。だが丁度そのときに「BINGOゲーム」が開催されており、遅れてパーティーに入ったおいらにもビンゴの賞品が待ち受けていたのだった。それは不思議な200mm×200mmの額縁か? こんなサイズのキャンバスがあったっけ? と疑問が膨らんでしまった今宵なり候。

明日からの、第15回「八王子画廊散歩」に参加します

今年も「八王子画廊散歩」の時期となり、おいらも明日からのこのイベントに参加する予定であります。

■第15回「八王子画廊散歩」
2012年3月8日(木)~3月13日(火)

http://www.atorie248.com/garousanpo/

今年のおいらの作品展示画廊は、八王子駅からはちょいと遠くなって「ギャラリーヤスタケ」であります。駅から徒歩で15分くらいの場所にある。1階が喫茶店で、その2階がギャラーとなっている。建物全体がツタの樹木に覆われた何とも趣向をそそる喫茶店の2階である。

■ギャラリーヤスタケ
東京都八王子市八幡町12-11
042-626-8114

明日の午後2時半からは、おいらがちょうど会場当番となっているのであり、興味のある方は御来廊ください。

ちなみに昨年は、八王子市内の最古の歴史を持つ「芙蓉」という画廊で、ウインドウズ側という目立つ場所にて展示してもらっていたので、初対面の人からも色々と、好意的かつ刺激的な評価をいただいていたことを想い出す。「家に飾りたいです」などと云ってもらいながらも買ってもらうことは出来なかったのではあったのだったが…。ともあれ久々に浮き浮き気分の前夜なのである。

「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」が開催(2)

■インディアンレッドの地の壁画

分け隔てられたブースを辿っ て行くと、広いスペースにただの1点の作品が展示されている場所へと行き着いていた。作品名「インディアンレッドの地の壁画」。題名から読めるとおり、壁 画としての利用を前提として依頼されて制作したという、ポロックの中での数少ないカテゴリー作品に含まれる。

塗料をキャンバス上に滴らせて描くポーリング、ドリッピングと云われる技法や、オールオーヴァー、アクションペインティング等々と称される志向性が頂点を迎えた1950年の作品であり、ポロックと云えば真っ先のこの作品が引用されることが当然となっている。評価額が200億円とも称される、現代美術の最高峰とされている作品である。

ゴッホやピカソを超えたとの評価が与えられているが、これには相当大きな疑問が付きまとっていることも確かである。ヨーロッパに遅れをとっていた米国美術界が金力にものを云わせて総出で手掛けたイベントの一つが、同作品への超高額評価であり、その役割を担う役者としてポロックに白羽の矢が立てられたと云うのが、客観的な見方ではあろう。アメリカンヒーローに祀り上げられたポロックは、センセーショナルな報道のターゲットとなり、映画作品のモデルともなったが、彼にとっての益に適ったかと問えば、決してその様なことは無かったと答えるべきであろう。

■カット・アウト

オールオーヴァーのスタイルを確立したポロックが、そのボード絵画を切り抜いて構成した実験的な作品である。今回の展覧会場でおいらが最も観たかった1点でもある。

人型にも見える切り抜いたその背後には、荒く絵の具を刷り込ませたキャンバス地が姿をのぞかせている。この手法の作品は6点あるとされているが、展示されていたのは我国の「大原美術館」が所蔵しているもので、同シリーズの中心的作品である。

解説文に依れば、このカット・アウト作品の見せ方に苦慮していたポロックは様々な実験と思索を繰り返していたが、突然の事故でついにその完成を示すことは無かったと云う。現在展示されている作品たちは、妻のリー・クラズナーの判断によって完成されたものとなっている。

「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」が開催(1)


米国現代絵画の巨匠と謳われるジャクソン・ポロックは今年、生誕100年を迎えた。それを記念して我国(米国ではなく日本)では「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」が開催されている。名古屋展に続き、東京展が東京国立近代美術館にて2/10~5/6の期間で開催中である。

■生誕100年ジャクソン・ポロック展
期間:2/10~5/6
場所:東京国立近代美術館
〒102-8322千代田区北の丸公園3-1

現代作家としてのポロックは尊敬すべきアーティストには違いないが、おいらにとっては同時代の米国で活躍したアーシル・ゴーキーや、アンフォルメル絵画の巨匠ことジャン・デュビッフェ達の方が圧等的なアイドルであって、ポロックに心酔したり特別に傾倒することは無かった。或は作品制作においての影響も小さかったと云うべきである。然しながら今回の「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」は企画回顧展として相当規模の展覧会であり、これを見逃したら一生出逢うことの出来ない作品群を思えば、出かけない訳にはいかなかったのである。

まず会場に足を踏み入れて最初のブースで感じたのは、20代のときのポロック作品の充実さである。厚塗りでぐいぐいと表現して行くそのスタイルは、ピカソの初期作品やミロの作品を彷彿とさせ、ある作品は岡本太郎の作品世界を想起させてもいた。ポロックが岡本太郎に与えた影響について、一つの示唆を齎してくれていたのであった。

(この稿は続きます)

飛騨高山にて山下清画伯の「放浪の天才画家 山下清原画展」に遭遇

飛騨地方への帰りに立ち寄った高山で偶然、「放浪の天才画家 山下清・原画展」に遭遇した。どうしてこの小都市にてこんな珍しい企画展が開催されたかも判らずに、兎も角も展覧会場に足を踏み入れてみたところ、おいらが初めて目にする山下画伯の原画が、会場を埋め尽くしていたのだった。

ところがここもまた「撮影禁止」の貼り紙がいたるところに貼られてあり些か興醒めではあっのだ。主催者側の勝手な都合で「撮影禁止」にするなどはもっての外の行為では有るが、旅の途中で野暮な抗議などしても仕方がないので撮影は諦めていたのであり、貴重な山下画伯の作品の息遣いを、視覚的にお伝えできないのがいと残念である。

よく知られている花火などの貼り絵のほかに、鯛、金魚、山女魚、鯖などの魚類や蝶々、ふくろう、蟻、かたつむりなどの動物や植物、その他様々な生命体がモチーフにされていて、それが切り絵と云う手法と相俟って、極めて高貴な創作品として展示されていたのである。

中には「タイに花火」という意外な取り合わせの作品も有り、これぞ我国におけるシュールリアリズム作品の極北ではないかとも思わせるものではあった。この傑作もまた「撮影禁止」などと云う馬鹿げた主催者側の意向で紹介できないのがいと残念なり。

非難ばかりでキーボードを置くのも詰まらないのでもう一言。

山下清画伯と高山市との関係性はほとんどないと云うことである。だが、当企画展のオーナーが熱心な収集家であるなどのことからこの展覧会が実現したと云うことであり、行きずりの旅行者としては行幸であったのかもしれないと思った。

地方都市でも益々に、このような熱心な収集家による展示会が開催されていくことを望む也。

■放浪の天才画家 山下清原画展
高山本町美術館
岐阜県高山市本町2-61
0577-36-3124

ヴィム・ヴェンダースによる「もし建築が話せたら…」

先日当ブログにて紹介した東京都現代美術館での企画展「建築、アートがつくりだす新しい環境」展では、とても興味深いブースがあった。

ヴィム・ヴェンダース「もし建築が話せたら…」という、3Dインスタレーションのブースである。

イメージとしての例えばアップル社の社屋が連想される建築物が、声を放って語りかけている。

――――――――――
ある場所が気に入って
そこで長い時間を過ごしていると
声が聞こえてくることがあります。
場所には声があって
建築は話をするのです。
そう、あなたに話しかけています。
聞こえますか?
話し方は本で勉強しました。
私は勉強することが得意なのです。
勉強のための建物だから、何の不思議もないけれど。
私は本が好きです。
本を読む人たちが好きです。
さあ来て、読んで、学んで。
中に入って、そして歩き回ってほしい。
行ったり来たりしてほしい。
私はいつでもここにいます。
動くことができないから。
みなさんのように旅ができたらどんなに良いでしょう。
もちろん私も、他の場所のことは知っています。
でも、本を通じた知識しかないのです。
(以下略)
――――――――――

ちょうど我が「みどり企画出版」では、建築写真集「瞬間の連続性」を刊行したところであり、建築が語りかけるかのごとくのシーンも、ページのかしこに見て取ることができるのである。

同写真集のお求めは、下記アドレスからどうぞ。

http://midorishop.cart.fc2.com/ca0/2/p-r-s/

■瞬間の連続性 the continuum of moments
ISBN978-4-905387-01-5
定価:本体1000円(+税)
発行:みどり企画出版
企画・編集:川澄・小林研二写真事務所
判径:250×250mm
頁数:60ページ
体裁:並製本

東京都現代美術館にて「建築、アートがつくりだす新しい環境」展が開催

建築写真集「瞬間の連続性」に関わったこともあり、このところ、建築物等の物理的社会環境と人間生活との関係に深く関心を抱くようになった。ちょうど今現在、東京都現代美術館にて「建築、アートがつくりだす新しい環境」展が開催されていることもあり、鑑賞に訪れていた。

■「建築、アートがつくりだす新しい環境」展
2011年10月29日(土) ー 2012年1月15日(日)
東京都現代美術館 企画展示室3F・1F
〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1
http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/129/

否が応でも現代社会に向かい合うとき、いかなる人間も現代建築が与える影響を受け取らざるを得ない。個人的にはマンション等の「集合住宅」に嫌悪の念を抱いているおいらだが、個人的感情にて現代生活の全てを選び取ることは不可能である。避けてする暮らし方などしたいとも思わないのだ。

建築家をはじめ建築に関与する写真家、デザイナー、映像作家、等の職業人の多くは、無機物としての建築に生命を宿すことを夢見つつ、極めて些細なことから天才的なアイデア迄をも駆使して、日々の営みを行なっているように思える。そんなこんなを体現できる展示会となっている。

ギャラリー八重洲にて「世界一小ちゃい?!ミニ絵画展」開催

東京駅八重洲口近くの「ギャラリー八重洲」にて、「世界一小ちゃい?!ミニ絵画展」が開催されている。

■世界一小ちゃい?!ミニ絵画展
2011年12/12(月)~23(金)
ギャラリー八重洲
〒104-0028 東京都中央区八重洲2丁目1番
八重洲地下街中1号(外堀地下3番通り)
TEL 03-3278-0623

ちょうど葉書き大くらいの大きさのF1号キャンバス、サムホールサイズとも呼ばれる画布や用紙に描かれた作品が、1000点あまりが並んでいる。かといって全てサムホールなのではなく、「これ以上小さな作品を描けない」という理由からその数倍程度サイズの作品も散見されていた。

漫画家、イラストレーター、画家、作家など、およそ100名程度の出品者がそれぞれに10点程度の作品を持ち寄って展示された、ユニークな展覧会なのだ。戸川昌子、西村春海、種村国夫、などの見覚えのある名前の作家による作品も目にすることが出来た。

よくサムホール程度の作品は、大作のための下書き、習作として描かれることがある。おいらも、新しいビジョンの作品を描くにあたって、サムホール程度の習作を手掛けることはままに有るのだ。

だが当展覧会に展示されている作品群の大部分は、そういった習作的印象は薄いと感じたのだ。小さな画布や用紙の世界には、そんな小さな世界には、じっと覗き込んでみる興味津々の物語を受け取ることが出来る。例えば年賀状においても作品づくりが可能であろう。

写真・言葉・書で時代を飾る、藤原新也さんの「書行無常展」が開催

今月の5日より27日まで、藤原新也さんの「藤原新也の現在 書行無常展」が開催されている。

■藤原新也の現在 書行無常展
2011年11月5日(土)~27日(日)
東京都千代田区外神田6-11-14
3331 Arts Chiyoda
http://3331.jp

かねてよりおいらも注目しているアートのスポット「3331 Arts Chiyoda」が会場となっている。

たしか昨年の頃より、雑誌「プレイボーイ」誌にて連載されていた新也さんの「書」にまつわるアート活動がテーマとなっていて、これまでのどんな展覧会にも似ていないつくりになっているという印象をもった。

テーマは「諸行無常」ならぬ「書行無常」である。新たに「書」というテーマを引っさげて行なった展覧会なのか? 或は関係者が企画して新也さんに提案して実現したものなのかは定かではない。

はっきりしていることの一つは、以前の新也さんのどの写真展とも異なっているのは、写真家から行動家へと少しばかり、依って立つ立ち位置を動かしたということだろう。写真家・新也さんとしての顔以上に行動家、活動家としての顔が前面に出て来ているのであり、新しい出会いであったという印象を強く抱いている。

千代田区「3331 Arts Chiyoda」にて「写真家60人の『瞬間と永遠』」展が開催

千代田区「3331 Arts Chiyoda」にて「写真家60人の『瞬間と永遠』」展が開催されている。

http://www.tamron60.com/

主催しているのはカメラのレンズメーカーとして有名な「タムロン」。60名の写真家が今年の2011年に、同社の「18-270mm」レンズを使って撮影した写真が一堂に展示されている。云わば使用する道具が限定されているという、ある種とても珍しいコンセプトの写真展であると云えよう。

実はこの、タムロンの「18-270mm」レンズはおいらも愛用しているレンズだ。超高倍率のズームレンズでありながら軽量コンパクトであり、一眼レフカメラに装着すればこの1本でほとんどすべての撮影が可能になるという、一時代前ならば夢物語でも語られたような秀逸なレンズである。

ズームレンズは単体レンズの良さに取って代わることはできないながらも、理想的なズームレンズの姿を体現していると云えよう。

殊にぶらりと手軽に出かける小旅行にはとても重宝すること請け合い。実際においらもまた、ニコンの一眼デジカメにこのレンズを装着して撮影に臨むことが非常に多くなってきているのだ。ほぼ9割はこのレンズによる撮影だ。ちなみにそれ以外のレンズを使用するのは50mmのクラシックレンズと、11 ~ 16mmの超広角レンズくらい。この3本でほぼ全ての撮影が可能になっている。

写真展に参加している作家作品の多くは、現役作家として活動を続けており、木村伊兵衛賞受賞者などの高名な作家も含まれている。そして彼らの作品の多くが旅行のスナップで占められている。紋切り型の観光写真もあるが、肩肘張らないで素直に撮影した、ハッとさせるくらいに新鮮な作品も混じっていた。

何時でも何処でも撮影が可能だというこのズームレンズの使い勝手は、想像以上のものがありそうなのである。万能オールマイティレンズの使用感を実感させるのだ。

「土門拳の古寺巡礼」展が八王子市夢美術館にて開催

――――――
ぼくは人生の過半を
カメラを背負って
古寺を巡ってきた
――――――
こう語って古寺を撮影し続けた土門拳氏の「古寺巡礼」展が「八王子市夢美術館」にて開催されている。

http://www.yumebi.com/

これまでに土門拳氏の作品集等にて「古寺巡礼」の作品群については目にしてきたが、今回の企画展にて一同に集った作品群に接し、改めて土門拳の古寺巡礼、即ち此れだけに年月や熱情を傾けて創造され続けてきた「古寺巡礼」の、云わば魂に接することが出来たと感じ取っていた。

巨大なサイズにプリントされた作品群の中にはひっそりと、オリジナル・プリント群が佇んでいたのである。額装された作品には「Domon Ken」という自筆のサインが添えられていた。其れを目にしておいらは作家の思い入れ、強烈なる自己主張の息吹を感じ取らざるにはいかなかったと云うべきであろう。

古寺は日本の文化文明を担ってきた文化財であったと共に、否それ以上に強く、土門拳の捉えた仏像、仏閣の美しき姿形を印画紙に定着させていたのであった。

所謂作家とモデルという関係性でありながらも、作家はモデルに従属することなく「土門拳」を主張していた。写真が芸術として我国にて認められた背景に、この土門拳氏の「古寺巡礼」が果たした功績、光跡は計り知れないものがある。それを何よりも感じさせる写真展である。

尾崎豊ハウスがホーメストの家に建て替えされるという

1992年(平成4年)4月25日に26歳と云う短い生涯を閉じた天才シンガー、尾崎豊。彼が最期の日に倒れていたのを見つけて手厚く介抱をし、病院への搬送を行なっていたのが小峰さんであり、小峰さん宅は今からもう19年と数ヶ月の間ずっと、「尾崎ハウス」と呼ばれ続け、その後小峰さんの家には、全国からの尾崎豊のファンが訪れるようになっていた。

その倒れていた日に運ばれた病院から何故か自宅マンションへと戻された尾崎豊はその日のうちに容態が悪化し、死ななくてよいはずの身であったはずだが基本的な生命維持の治療も施されることなくとても残念な不遇の死を遂げてしまったのである。

そんなファンにとっては忘れられない「尾崎豊ハウス」が改築されるというニュースに接したおいらは、おいらにとっても非常に思い出深い、古くからのそのハウスを目に焼き付けたくなり、訪れていたのだった。京成本線「千住大橋」駅から徒歩で5分程度の下町の住宅地である。近くには「中央卸売市場足立市場」という卸市場が控えている。もっとずっと前からその場所は通称「やっちゃば」と呼ばれる下町の市場であり、「やっちゃば通り」という歴史的街道も近くには残されている。戦時中の大空襲にも焼かれることなく下町住宅地の風情を今なお残している一帯に「尾崎豊ハウス」が在るのだ。

5~6回は訪れたろうか、その場所へ何年かぶりに訪れていた。ドア扉は締め切っており、中には人の気配は無かった。たしか4畳半の部屋の壁面には大きな建築計画の看板が掛けられていた。マスコミ情報によればこの9月末までに旧ハウスが取り壊されるとのこと。そして新しくホーメストの家が建立されることになる。

話はだぶるが、おいらも20年あまりの間に何度かハウスを訪れ、天才尾崎豊を介して、若い人たちとの貴重な交流を得ていた。若いファンがこの場に集どるのは尾崎豊さんだけではなくて、小峰さん家族の人たちの、厚い心により添って集まってくると云うものではあった。若い人、特に甚大な悩みを抱えている人たちをも、小峰さんが受け入れていたのだ。

つまりは此処は、そんな特別な場所だったのである。古き「尾崎豊ハウス」のレクイエムを歌いたい気分でこの場所を訪れ、そしてあとにしたのだ。近くの「やっちゃば街道」添いには地味だが白いユリ科の花が咲いていて来る訪問者を歓迎しているようだった。花言葉は「純潔」という。まさに尾崎豊さんのハウスに相応しい。

「アーツ千代田3331」にて「千代田芸術祭2011」が開催中

千代田区の旧練成中学校を改修して昨年オープンした「アーツ千代田3331(3331 Arts Chiyoda)」にて「千代田芸術祭2011」が開催されている。(9/3〜9/19火曜休場)

http://fes.3331.jp/

昨年の「アンデパンダン展」がスケールアップして企画された展示会ということで、1階メインギャラリーでの作品展示に、コミュニティスペースと屋上にて「ステージ」や「マーケット」の催しが加わった。

展示部門のジャンルは設けられておらず、油画、アクリル画、立体作品、写真、ビデオ、その他、多岐にわたっている。広く市民アーティスト達の表現の場として生まれた同会場においてジャンル等々の出展の規制を設けることなどナンセンスであり、会場にはジャンルを超えた表現の息吹が渦巻いていたのであり、企画者達の基本的な目的は達成されていると見える。「アンデパンダン展」を称した展示会であるからしてあからさまな職業批評家達のコメントやらは避けられており、当たり前のことながら風通しの良い展示会と云う印象を与えている。

先述したようにこの会場は元は区立中学校だった場所だ。校庭はそのまま公園として再利用されている。通常こういう場所のことを「廃校」と呼ぶのかもしれないが、こと旧練成中学校に関してはこの言葉は当てはまらない。現役の校舎としてそのまま使えるくらいに、旧校舎と場に関係する人々、あるいは行き交う人々との関係性が密にあるということを感じさせるに充分である。庭の花壇には昼顔が花を咲かせ、ツルが天然の緑のカーテンを形作っていた。

2階、3階は貸しギャラリーとして機能しており、様々な個人やグループによる展示が行われている。階段や廊下を歩いているだけで、中学生の時代にタイムスリップして気分にもなれて、それだけでもわくわくしてくる。おすすめのスポットである。

■アーツ千代田3331
〒101-0021
東京都千代田区外神田6丁目11-14

横浜「黄金町」ガード下のアートスポットに注目

「ヨコハマトリエンナーレ2011」のあとで、黄金町から日の出町駅ガード下のスポットを訪れた。伊勢崎町の市街地からも近いこの一帯はかつて売春窟として有名であり、犯罪の温床ともみなされていた場所である。2000年代に入ったそう遠くない頃に、古くからの地元住民や警察関係による浄化の運動が展開されてきた。かつての売春宿や違法店舗が消えて空き家になった場所に、アーティスト達が活動や発表の場所として利用している。街ぐるみでアートのスポットとして再生させようと、様々な試みが行われているのだ。

http://www.koganecho.net/

2008年からの「黄金町バザール」は、今年は「ヨコハマトリエンナーレ2011」と合わせてスタートし4回目を迎えた。町興しに日本国内外のアーティストが参加し、今流行の「絆」を深め合おうと云う活動が展開されている。ガード下には新しいスタジオや制作の拠点が生まれており、町の再生という目標を後押ししているとも云えるのだ。

「黄金町バザール」の事務所を兼ねる「竜宮美術旅館」では、古めかしい旅館の建物の場を利用して、松澤有子さんの作品「ひかりを仰ぐ」等の作品を展示している。木賃宿風情の一角には風呂場が設置されているが、その場がアートとして再生されており、希望者が申し込めば1日1組に限り入浴も可能だと云うことだ。場とアートとイベントとが一体化したユニークな試みとして注目される。機会があればおいらも一風呂浴びたいものだ。

その他、ガード下を歩けばアートグッズを扱うショップや、若手アーティストの制作現場に遭遇することとなる。9月からは作品発表の場として様々なイベントが企画されているようなので注目しているところである。