精霊新人の肖像

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア P10号

まずは今回のモデルになってもらった精霊さんはと云えば、先ごろ精霊デビューを果たしたばかりの新人でした。彼は昔からの知人の甥っ子でもあり、ポーズなどは決まったところもなく、初々しい仕草がとても印象的なのでした。

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着飾った精霊の肖像

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2106_02s

キャンバスにアクリル他ミクストメディア P10号

今回モデルとなってもらった精霊は、少々着飾った真似をして僕のアトリエに現れたのです。
「随分おしゃれして来たねぇ・・」
「いや、そんなことないですよ・・」
「独特なセンスが良いねぇ・・」
「ありがとう・・」
等々といった他愛ない会話をして感じたのは、とてもシャイだったということです。年齢や性別のことは特別に聞き出すことはなかったが、とてもおめかしした彼(彼女?)の姿は、とても若々しく、そしてエネルギーを醸し出していたのでした。

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精霊の肖像

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア F10号

先日、従姉妹の家族が我が家を訪れたおり、作品が飾っている居間に腰を掛けるとおもむろに、「何故、活っちゃんは精霊ばかりを描いているの?」と問われ、ちゃんとした返答ができずに、しどろもどろになってしまいました。その反省などから、近頃になって考えたこと等を述べていきたいと思います。

 

改めて考えてみました。まずは、そもそも何故に僕が「精霊」をモチーフにしているのか? ということについて。僕の描く対象はといえば、かねてから、「野獣」「猛禽」等々であったのですが、そもそもモチーフとなっていた彼ら野獣、猛禽たちは、現実に存在する対象ではなくして、僕の想像上の生物でもありました。その延長上として数年前から「精霊」たちがターゲットとなったのです。

 

そのきっかけは、振り返ってみれば、稀有な偶然が重なっていました。その数日前の僕の夢では、夢の世界中ではもう数十年前からずっと旧知であった妖怪たちからの、歓迎の宴にまたまたのようなノリで招待されていました。天然野菜中心の御馳走でもてなされた後に、何人かの妖怪さんたちに紹介されたりしていました。「何人」と書いたのは、勿論妖怪さんたちは人間ではないのですが、かといってそれ以外の言葉が見つからなかったということなので、細かいことを気にする人には容赦願いたいのですが。それはそうと妖怪さんたちはその日もとても友好的に対応してくれたので、とても有難く思ったことを覚えています。そんなこんながあり、夢の気分が収まらなかった或る日に、これまた偶然にも、まさに日中の実生活において、とても稀有な出逢いがあったのです。それは白日夢のようでもありました。

 

推察するには、未だ成仏できないであろう昆虫類や猛禽類たちが僕の住処に押しかけて、この僕に成仏のための読経を求めたのです。それは突然のことではありましたが、自身に顧みても思い当たる節がないこともなくて、喜んで読経に参加していたのでありました。臨席したお坊さんには面識があり、とても親しくしていただいたこともあり、読経の言葉一つひとつにうっとりとなっていたのですが、まさにその時に、ドラマが起こったという訳です。読経に参加していた猛禽たちや妖怪たちが、こぞって口にしていた言葉でした。「精霊 Lives Matter!!」 「精霊たちの命は大切だ!」 といった言葉のうねりが一気に沸き起こったのです。言葉のうねりが共鳴のうねりとして、人間の一人である僕に襲い掛かっていました。

 

実は妖怪たちの世界でも、精霊たちは絶滅危惧種として、特別な存在とされてきました。決して精霊たちは妖怪の世界の優等生ではないのです。特に近年は、一部の心無い人間たちからのいじめや暴力が相次いでおり、精霊らしさを発揮する機会が失われているのでした。彼ら妖怪たちが一気に声を上げたのには、そんな背景があったのです。元々はかたちを持たない精霊たち、妖怪たちには、生命の保証はありませんが、彼らの命こそが、我々人間たちにとっても重要なのだというとてもエキサイティングな主張でした。読経の後に巻き起こった「精霊 Lives Matter!!」 「精霊たちの命は大切だ!」 といった言葉のうねりといったうねりは、参加者たちを奮い立たせ、精霊たちを決して絶滅させないことを確認し、終了したのでありました。

 

或る日中に引き起こされた、云わば白日夢的なドラマの概要は、以上の通りです。それは新型コロナという疫病が猛威を振るっていることの予兆のような光景でもありました。災厄発生の瞬間の記憶が、デジャブとして鮮明化されたのかもしれません。デジャブ、あるいは白日夢にうなされた後に、僕が瞬間的にとった手段はといえば、そんな記憶を定着させるために、その物語的主人公の精霊をモデルにして、絵画的手段によって描くことでした。そうして現在の「精霊」シリーズの制作につながっていると云ってよいでしょう。

 

再会&再開2021

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア F30号

以前同じテーマ、モチーフで描いたものを、F30号のキャンバスにリメイクした作品です。旧友に再会し、新しく再開をスタートすることをイメージしました。コロナ禍が続く限り、このテーマは継続して描くことになっていくでしょう。

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憂鬱な精霊の肖像2021

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア F10号

数年前から僕自身のモチーフとなっている「精霊」を久しぶりに描きました。憂鬱な表情を見せる精霊の姿には、何か現代の人間たちが忘れようとしているものを示しているようです。それかあらぬか、このような精霊たちの姿、表情、等々は、僕にとって、肖像画モデルとして申し分のないモデルとなっているのです。これからも継続して精霊たちにはモデルとあり続けてほしいという思いを強くしているところなのです。

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ジレンマⅡ

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア P10号

いまの僕がいわゆる一つの「ジレンマ」の最中であることは前作のキャプションに書いたことですが、ここにきてまた新しい発見がありましたので述べていきたいと思います。実はこのジレンマ状態という代物は、決して忌避すべきものではなくて、ある意味では愉しい状態なのではないのか? という思いを強くしているのであります。そこには張り詰めた感性の交錯が存在し、ピリピリとした稀有的な刺激があったということ、さらにまた、新しい自分自身の発見に役立っているということ、等々のことからも、これからも仲良くジレンマと上手に付き合っていきたいと思っているのです。

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ジレンマ

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア P10号

人生の岐路に向かい、人がとるべき方法は一つではない。様々な選択肢があり、どの道を行こうと自由である。人間にとって自由とは人間であるべき必須の条件であるとともに、逃れべからざる条件でもある。‥‥そんなことを考えつつこの作品を描いたのですが、きっと現在の自分が、いわゆるジレンマの只中にいることなのかもしれません。

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闇夜鳥2021

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キャンバスにアクリル他  F30号

 以前制作した「闇夜鳥」をテーマに、本年度版としてリメイクした作品です。昨今の長引くコロナ禍の影響を強く受けているとともに、制作場所(アトリエ)環境、生活スタイル環境、等々の変化も、画風に影響を与えていると思います。
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遷移

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キャンバスにアクリル他ミクストメディア P10号

例えば、闇の世界に光が注がれるとき、その世界は新しいビジョン、いのちを産み出そうとしている時間でもある。それはまさに「遷移」の瞬間である。光は様々な色をまとっており、決して一様な相貌を示してはいないのだが、そんな稀有な時間こそが、我々が追求すべき瞬間なのだ。

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再会&再開

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キャンバスにアクリル他 F100号

昨年描いた100号作品を、居間ギャラリーに移動して展示してみました。いつもの照明光に、花束も添えて、少々のお化粧も施してみました。僕にはとても愛着の深い作品なのですが、少々昔の作品である故に、よそよそしさをまとって佇んでいるようです。「飾る場所はここで好いのか?」と尋ねてみたら、「どうせ旅立つまでの仮の場所だろうから、別に構わないさ・・」等といった返事がきっと返ってくることでしょう。

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近作の10号作品3点

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ともに、キャンバスにアクリル他ミクストメディア 左よりP10 号、F 10号、P10号

近作の10号作品3点を、居間ギャラリーに展示してみました。
日光の差し込む制作場所のアトリエとは違い、人工の照明光に照らされ並べられた作品たちは、少々気取ったたたずまいを醸していて、それが良いのか否かは判断に迷うところなのです。判断しようのない問題なのかもしれません。作品がいつも作家の望む環境で鑑賞されるなどはあり得ないのであり、行ってらっしゃいと、割り切って送り出す以外に仕方ありません。

遷移するいのち

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キャンバスにアクリル他 P10号

この世の中の全てのいのちには、遷移するべき位相があると思っています。その厳かなイベントに立ち会えたのは、ある日の深夜。いわゆる夢の中の出来事として遭遇したのでした。とてもラッキーな光景に遭遇したので、ドキドキ感が半端なく横溢していたことを記憶しています。その時の感動をタブローに記録しようと思いつつ描いたのが、この1点です。

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精霊たちの里

キャンバスにアクリル他 F100号

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春が近づく今頃の季節になると、精霊の世界でもワクワクドキドキ感が横溢し、活動が活発化しているのが見て取れます。こういう気分は伝染性を持っているので、我々人間たちにも伝播しているものです。

アトリエから居間ギャラリーに移して、制作中の100号作品を飾ってみました。ギャラリー気分を味わうために、新しい照明を照らしてみました。効果のほどは……?

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再会&再開

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キャンバスにアクリル他 左=P50号 右=F50号

昨年から連作している「再会&再開」シリーズの新作です。自宅の居間ギャラリーに2点、並べてみました。

コロナ禍でこのテーマ作品を連作して1年以上が経ちますが、このテーマの重要性が高まっていることを感じます。疫病予防から人間と出会えない事の重み、逢いたい人との再会と、再開が実現することの重み、そうした重々しい環境から生まれたテーマであるゆえ、このままずっとこのテーマを引き摺ってしまいそうな予感です。

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再会&再開

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キャンバスにアクリル他 P50号

昨年から連作している「再会&再開」シリーズの新作です。
古くからの友人たちと再会し、新規の活動を再開すること。そうした将来に臨む光景とは? 如何なる姿を示しているのか? 想像と創造のエネルギーはさらに尽きないのであります。

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再会

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2021-02-20_01

キャンバスにアクリル他 M10号

コロナ禍の世界で人間たちは、様々なかたちの「再会」の希望を胸に抱いて、日々の営みを行なっています。親子同士の再会、恋人同士の再会、友人達との再会、……。精霊たちの棲む世界でも、「再会」を果たしたものたちが、悦びを分ち合う光景が目に浮かんでくるのです。人間達よりも一歩先を生きているようにも見えるのです。

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獣が闊歩する里

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キャンバスにアクリル F100号

公募展に出展したF100号の、ちょっと大きめサイズの作品を、アトリエから運び出して、居間に飾ってみました。

外来の人もほとんど訪れず、あまり使うことのない閑散とした室内の雰囲気が、少々活気付いてきました。この際、居間を模様替えして、第二のアトリエとして使用していこうと思っているところです。

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遷移する生命

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キャンバスにアクリル画 F50号

生命が姿形を変えていく、即ち「生命の遷移」をイメージして制作した作品です。

いのちの宿る鳥類や昆虫等々に、人間の存在を重ねてみると、新しい世界のビジョンが見えてきました。人間の存在も、所謂実存的な存在の価値観に囚われてはいけないものが、そこにはあります。近頃の僕の制作活動は、そのことを確認するための、日常的な行為のようでもあるのです。

写実的な表現を忌み嫌うのは、けっして僕ばかりではないと思いますが、その原因のひとつが「写実」と呼ばれる表現世界が、人間中心の世界観に囚われているからであります。世界の真実を表現するにあたり、人間中心の固陋な世界観は不必要であるのみならず、邪魔な代物となって僕たちの前に立ちはだかっているのです。


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青への飛翔

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キャンバスにアクリル他 F10号

庭や野原で飛翔する蝶々に出逢うとき、いつも思うことは、彼らへのあこがれである。蝶々たちのエレガントな素振り、振る舞い、身のこなしには、感嘆するばかりなのだ。稀有な超表現力を発揮する彼ら蝶々との触れ合いは、とても貴重な時間の一つとなっている。彼らの飛翔する姿はまさしく、自由を体現している。自由を表現する行為、振る舞いにほかならないようにもみえる。人間界の超一流ダンサーの誰も表現できないであろう、超弩級の表現力を発揮しているのである。

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誕生の予感

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キャンバスにアクリル他 F10号

精霊たちにとっても人間同様
誕生を予感させる時間というのは
最も神聖な時間の一つである

生まれ出る新しい生命が
どのような活動を行ない
どのような歴史を培うのか?
そんな想像をするだけでも
ロマンティックが止まらない
瞬間と云えるのである


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